LinkedInは、日本を含む17ヵ国の経営層を対象に、現在の経済環境を踏まえた企業の人材戦略などに係る調査を実施し、その結果を発表した。
調査の概要と結果は以下のとおり。
- 調査期間:2022年9月~10月
- 調査対象:経営層2929人
- 調査方法:オンラインでのアンケート調査
- 調査実施国:イギリス、アイルランド、フランス、ドイツ、オランダ、イタリア、スペイン、スウェーデン、アラブ首長国連邦、アメリカ、メキシコ、ブラジル、インド、シンガポール、オーストラリア、日本、中国
従業員の福利厚生は維持 物価上昇へのサポートも
経済の先行き不透明感が強まる中で、従業員の福利厚生に係る費用を削減する予定の有無について聞いたところ、日本では回答者の62%が「福利厚生費削減の予定はない」と回答した。その理由として、60%が「従業員の心身の健康維持が重要であること」、59%が「従業員の士気の低下を防ぐこと」を挙げた。
一方で、世界全体では、福利厚生費の削減を「すでに実施している」「予定している」とした回答は合計で66%に上り、「予定はない」とした31%を大きく上回った。この点から、日本の経営層において、従業員の福利厚生を維持しようとする姿勢が強いことがうかがえる。
また、今後6ヵ月間のビジネスにおける優先事項を聞いたところ、日本では「成長のための新規人材採用」が34%と最も多く、続いて「従業員のキャリア開発サポート」が33%に上った。このことから、日本の経営層においては依然、成長戦略として人材への投資意欲が強いことが見て取れる。
その他、物価上昇に対する従業員へのサポートとして採られている施策については、日本では「賃金・給与の増加」が36%で最多だった。次いで、「育児へのサポート」(28%)、「福利厚生に関する助成」(25%)となり、物価上昇に係る従業員の不安に対処している姿が浮き彫りとなった。
従業員のリスキリングを重要視
今後6ヵ月の人材戦略における優先事項を聞いたところ、日本では「従業員のモチベーションとやる気の維持」が46%と最も多く挙げられ、「従業員のスキル向上・リスキリング」が33%、「さらにフレキシブルな職場環境を提供する」が32%と続いた。
また、自社の戦力が先行き不透明な経済への耐性を持つために必要な施策を聞いたところ、「従業員のスキルに基づいた成長領域への配置転換」が45%と最も多く挙げられ、続いて「従業員のスキル向上とリスキリングへの投資」が42%となった。
その他、従業員のモチベーションを維持するために考えられている施策について尋ねると、「明確なキャリアパスと能力開発の機会を提示すること」が46%で最多だった。次いで、「マネージャーとの個人面談を増やす」(33%)、「メンタルヘルスや福利厚生への投資」(31%)となった。
これらの回答から、ビジネスのデジタルトランスフォーメーション(DX)が進む中、日本の経営層の間では、従業員のやる気を高めつつ、スキル向上としてリスキリングが重要であると考えられていることがうかがえる。
今回の調査・分析から、経済の先行き不透明感が強まる中でも、日本の経営層の多くは人材に係る費用の削減を考えておらず、また成長戦略として従業員のスキル向上を位置付けていることが分かる。
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