帝国データバンクは、「DX推進に関する企業の意識調査」を実施し、その結果を発表した。
調査の概要と結果は以下のとおり。
- 調査期間:2022年9月15日~9月30日
- 調査対象:全国2万6494社
- 有効回答企業数:1万1621社
DX取り組み企業のリスキリング取り組み割合81.8%、DXの推進と一定の相関
リスキリングについて、何らかの取り組みを1つ以上実施している企業(「取り組んでいる」企業)は全体の48.1%、「特に取り組んでいない」企業は41.5%だった。DXの取り組み状況ごとに見ると、DXに取り組んでいる企業(以下、DX取り組み企業)のリスキリング取り組み割合は81.8%に上った。一方、DXに取り組んでいない企業(以下、DX未取り組み企業)のリスキリング取り組み割合は32.2%にとどまり、DX推進とリスキリング取り組み状況の間で一定の相関がみられた。
リスキリング取り組み内容、「新しいデジタルツールの学習」「eラーニングの活用」が上位
DX取り組み企業のうち、リスキリング取り組み内容上位はオンライン会議システム、BIツールなど「新しいデジタルツールの学習」56.8%、「eラーニング、オンライン学習サービスの活用」35.3%の順となり、DX取り組み企業では日々の業務に直結する取り組みが上位に並ぶ。
一方、DX未取り組み企業(「取り組み意向あり」を除く)のうち、取り組み内容上位には、「経営層による新しいスキルの学習、把握」41.5%、「経営層から従業員に学習が必要なスキルを伝達」29.1%と経営層の学習に関連するものが挙げられた。
取り組み状況、「大企業」は60.4%、「中小企業」は45.8%
規模別に見ると、「大企業」のリスキリング取り組み状況が60.4%に達したのに対し、「中小企業」は45.8%にとどまった。取り組み内容を見ると、「新しいデジタルツールの学習」が大企業58.1%・中小企業46.0%(12.1ポイント差)、「eラーニング、オンライン学習サービスの活用」は大企業39.6%・中小企業25.4%(14.2ポイント差)と差が開いた。新しいデジタルツールやeラーニングの導入には、一定の資金や人的コストを要することから、他項目に比べて規模による取り組み状況の差が顕著となった。
実際に中小企業からは、「DX対応のシステム構築やソフト購入費用が高すぎる。コストに見合う成果が発揮できるか疑問」(電力制御装置製造、東京都)という費用面の課題や、「デジタルツールは推進担当者だけでなく、一般社員も活用できなければ意味がないため導入に踏み切れない」(機械同部品製造修理、岩手県)という人材面の課題も挙げられた。
従業員数1000人超のリスキリング取り組み割合は7割超
従業員数別に見ると、規模に比例して取り組み割合も上昇した。1000人超ではリスキリング取り組み割合は74.0%に達した一方、100人以下の取り組み割合は45.5%にとどまった。
中小企業の声として、「中小企業の多くは目の前にある障害をクリアすることが第一であり、10年後20年後を見据えた人材育成は難しい。大企業のように経営に余裕があり、人材をつなぎとめられるのであれば教育も良いが、せっかくお金と時間をかけて育成しても、スキルを身につけた後に転職してしまったら、と考えると二の足を踏んでしまう」(一般貨物自動車運送業、福島県)という課題も挙がった。
業種別のリスキリング取り組み状況、取り組み割合上位は「広告関連」「情報サービス」
リスキリング取り組み割合の上位3業種は、「広告関連」69.2%、「情報サービス」67.5%、「金融」62.1%だった。同業種の企業からは、「DX事業を主軸にした事業部を作り投資を行っている」(ソフト受託開発、大阪府)、「画面共有による指導が一番効果があると考え、システム化、クラウド化によるレベル向上を毎年進めている」(ソフト受託開発、福岡県)などの声が上がった。
下位3業種は、「娯楽サービス」34.2%、「建材・家具、窯業・土石製品卸売」38.6%、「メンテナンス・警備・検査」39.2%だった。同業種の企業からは、「リスキリングは必要に迫られた段階で検討。DX推進は現在考えられる以上の費用対効果が見込まれた場合に検討」(ガラス繊維・同製品製造業、福島県)、「自社のビジネス形態に適応するDX推進方法を相談できるところが解らない」(一般機械修理業、神奈川県)など、DX推進の課題も挙げられた。
取り組み内容別では、「従業員のデジタルスキルの把握、可視化」は「広告関連」、「DX、デジタル化に関連した資格取得の推奨、支援」は「情報サービス」が上位
リスキリングの取り組み内容ごとに取り組み割合上位の業種を見ると、顕著な特徴がみられた。「従業員のデジタルスキルの把握、可視化」の取り組み内容では「広告関連」が51.4%と全業種で最も高く、2位の「精密機械、医療機械・器具製造」44.1%と大きな開きがあった。
「DX、デジタル化に関連した資格取得の推奨、支援」の取り組み内容では、「情報サービス」が42.9%と全業種で最も高かった。基本情報技術者などの国家資格取得が業務と密接に関連していることが背景にある。
また、経営層が自ら学び実践する姿勢を示す「経営層による新しいスキルの学習、把握」や、従業員が新しい仕事に就く際に何を学べば良いかを示す「経営層から従業員に学習が必要なスキルを伝達」では、いずれも「旅館・ホテル」「飲食店」が上位に並び、他の取り組み内容との違いが際立った。
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