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人的資本経営の本質はKPIマネジメント | 第3回

HR領域における「KPI設定の切り口」を理解する《基本KPI編》

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 楠本和矢氏(HR Design Lab.代表 兼 博報堂コンサルティング執行役員)が人的資本経営のKPI(以下、HR-KPI)にフォーカスし、コンサルタントの視点で、各企業の人材戦略策定のヒントになる見解を述べていく本連載の第3回です。第1回でお伝えしたとおり、人的資本開示の目的とは、各ステークホルダーに対して、HR領域における取り組みの進捗を伝え、何らかの「実益」につなげることにあります。それを実現するために、どのような「切り口」でKPIを設定すべきか。この点について段階を追って解説していきます。今回はその基礎KPI編です。

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HR-KPIを「段階」で整理する

 指標の開示は、最初から全てを目指すのではなく、無理せず段階的に行うべきです。そして、それぞれの指標の開示も、全ステークホルダーを対象とするのか、特定のステークホルダーを対象にするのか、考えることもあり得ます。

 では、どのような「段階」があるのか。次に示すのはその一例です。

1. 基本KPI
全ステークホルダーが共通して価値と感じる取り組みについて、その成果を評価してもらうための指標。外部に開示する。
2. 発展的KPI
特定のステークホルダーが価値と感じる取り組みについて、その成果を評価してもらうための指標。外部に開示する。
3. PI(Performance Indicator)
自社の人材課題(つまり改善が求められるもの)について、進捗を把握するための指標。外部に開示しない。

 これらのうち、今回は基本KPIの切り口を紹介していきます。

①期待する人材を採用できているか(期待採用率など)

 自社の経営戦略を踏まえた上で、期待するスペックを持つ人材をどれだけ採用できたかを示すKPIです。計画した人数を採用できればそれでよい、というものではありませんよね。数だけ追ってそれでよしとすると、実態を見誤ります。当該KPIをモニタリングしないと、採用力の向上は見込めません。

 またこのKPIは、人事部だけで運用することは不可能であり、事業部との連携が必須です。まずは、各事業部の「戦略」に基づいた、採用したい人物像の明確化がなされ、それを指標化します。そして、事業部との連携に基づいた、採用後の「評価スキーム」の構築も必須となるでしょう。

 ちなみに、成果指標である「期待採用率」につながる中間指標[1]として、就職人気企業ランキングや、業務内容理解率、内定辞退率なども時折見ます。パフォーマンス管理のために有効ではありますが、必ずしも開示しなくてよいかと思います。

[1]: 中間指標、その上位指標である成果指標、ならびに下位指標である活動指標については、本連載第2回を参照してください。

②採用した人材が定着しているか(人材定着率など)

 採用した人がどれだけ定着しているかを示すKPIです。これは多くの会社がすでに扱っているデータでしょう。しかし、KPI開示の動きは出てきているものの、当該KPIに触れているケースはあまり見かけない気がします。組織の健全性をダイレクトに表す、このようなKPIこそ積極的に開示すべきだとも考えます。

 定着率が低く出たときの要因を分析する切り口としては、「カルチャーとのアンマッチ」「オンボーディングの失敗」「マネジメントの不備」「アサインメントのズレ」など多岐にわたります。ですので、本当にPDCAサイクルを回そうとするならば、それぞれの領域において、そのパフォーマンスを測定する中間指標を設定しておく必要があります。

 「エンゲージメント」や、パルスサーベイによる「健康指数」「モチベーションスコア」など、よく使われるKPIはありますが、これらを運用しようとすると結局、同じように上記各領域における中間指標が必要になります。

【著者】楠本和矢氏(HR Design Lab.代表 兼 博報堂コンサルティング 執行役員)
【著者】楠本和矢氏(HR Design Lab.代表 兼 博報堂コンサルティング 執行役員)

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この記事の著者

楠本 和矢(クスモト カズヤ)

HR Design Lab. 代表 兼 博報堂コンサルティング 執行役員。「マーケティングとHR領域の融合」をテーマに、現場での実践に基づいた様々なHRソリューションを開発提供している。現在は、組織の創発力強化・生産性向上を目的とした取組みに注力。また博報堂グループ内での実績No.1ビジネス研修講師でもある...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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