「おいしさ」を捉えなおして評価制度を刷新
——まずは和田萬さんのご紹介をお願いします。
「世界中に本当のおいしさを届ける」を理念に掲げ、ごまを専門とする食品製造企業です。現在の社員数は50人ほどで、1883年の創業から2023年で140年を迎えました。
ごまを専門的に扱う企業は日本に20社ほどありますが、当社は商品開発や自社販売といった上流から川下まで全ての工程を自社内で取り組んでいるのが特徴です。商品開発では国産や有機ごまを扱うなど、こだわりを持って活動しています。
私の肩書きは取締役で、戦略策定や財務分析といったほぼ経営全般を担当しています。2年前に人事評価制度を刷新した際も、制度設計や運営などに携わりました。
——人事評価制度を刷新された理由として、当時はどのような課題がありましたか。
2018年に5代目として社長が就任したことをきっかけに、企業理念にある「おいしさ」をしっかりと定義しようという機運が高まりました。創業から100年を超える企業なので、当社にはたくさんの文化があります。もちろん良いものもあれば悪いものもあって、再構築の1歩目としてそれぞれを整理する必要があると感じました。
当時は、「おいしさ」とは味のおいしさのことだと捉えて、とにかく良いものをつくろうという社風だったんです。「おいしさとは味である」という考えから、社内はプロダクトアウトの視点が強く、顧客視点が弱い傾向にありました。
たとえば、「お客様が急いでいるから早くつくって!」と伝えても、「ちゃんとしたものをつくるから無理」と返事がきて、お客さまを待たせてしまうようなことがありました。味が第一で、それ以外が二の次になっている状態です。
企業理念をあらためて見つめ直し、「おいしさ」には味だけでなく、「幸せ」も含まれていると考えるようになりました。その結果、お客様はもちろん、社員の幸せも追求できるような組織として文化を再構築する方向へと変わりました。
——当時の組織体制はどのようなものだったのでしょうか。
チームで仕事をすることがほとんどなく、みんなが職人気質の一匹狼として、自分がやりたいことだけを突き詰めるような組織だったと記憶しています。
社歴や経験値を評価されて任命されたマネージャーが4人いたのですが、役職はありつつも役割がほとんどない状態でした。チームをまとめていなかったり、目標を設定できていなかったりしたほか、メンバーの教育もできていませんでした。そのため、評価制度も業績や態度などがあまり反映されないものになっており、会長(前社長)が定性的に評価していた形です。