中小企業が人事評価制度に抱える課題の実態を調査
──まずは、今回「人事評価制度に関する調査」を行った背景を教えてください。
コロナ禍でリモートワークが当たり前になってきた中で、当社に入ってくるお問い合わせの内容がガラッと変わったことが、一つあります。加えて、ちょうどその頃、経団連が日本型雇用の見直しを求めたこともあり、人事制度についてもいろいろと見直しを迫られるようになってきた。
また、HR Techの広告が巷(ちまた)にあふれるようになってきたのも、この頃です。当社もツールの提供は行っていますが、ツールを入れるだけで解決できる人事課題なんてないと思っているんです。人事制度はその仕組みや運用の中にこそ課題がありますから、ツールで効率化したところで本質が変わらなければ、何の意味もありません。
そもそも、日本企業の99.7%を占める中小企業のうち、私たちの肌感覚でいうと7割くらいの会社は、人事制度を持っていません。従業員数100名未満の会社には、人事部すらないこともある。そのような状況の中で、当社が中小企業にできる課題解決を模索するため、人事評価制度の実態を把握したかったというのが、今回調査を行った背景です。
──調査結果によると、「完全自社メイドの人事評価制度を持っている」という回答が6割もあったんですよね。
そうです。中小企業の7割は(人事評価制度を)持っていないとして、残りの3割のうちの6割、つまり2割弱が完全自社メイドなのだと思っています。完全自社メイドといっても、人事のプロが作っているわけではありません。起業した人がサラリーマン時代に経験した仕組みをそのまま導入していたり、「ないよりはあったほうがいいよね」ということで、どこかからありものを引っ張ってきていたりしているのが現状だと思います。
──そうなると自分たちの限られた経験以上の制度は作れないわけで、あまり機能するものではないと推測できてしまいます。
ええ。一般社員からしてみれば、「そもそも正当な評価なんてない」とあきらめている感すらありますよね。「あぁ、また面倒な評価の時期がやってきた。やってもやらなくても、どうせ何も変わらないのに」と。よく分からないフィードバックをもらうためだけの季節イベントになりつつあるともいえます。