前編では、オンボーディングが必要な理由と成功のポイントを解説しています。
オンボーディングマップ設計のステップ
オンボーディングマップを設計する際は、まずは中途入社者が抱える課題を把握し、次に最適な施策を考えていくことが重要です。
STEP1. どのような課題があるのかを把握する
まず、中途入社者にヒアリングし、抱えている共通の課題を把握します。課題は大きく「衛生要因」と「動機付け要因」に分けられるでしょう。衛生要因とは、「それが解消されないとモチベーションが下がる要因」のこと。動機付け要因とは、「それが解消されるとモチベーションが上がる要因」のことです。
たとえば、中途入社者がよく直面する衛生要因と動機付け要因は次のとおりです。
- 衛生要因
-
- 人の顔と名前が一致しない
- 稟議の上げ方や上申の方法がよく分からない
- 会社独自の言語やマナーなど「暗黙の了解」が分からない
- 動機付け要因
-
- 自部署の目標が分からない(何のために、何を目指しているのかが不明)
- 情報の所在が分からず、全体像がつかめない
- 他部署の人が分からない
STEP2. どのような施策を実施するのかを考える
衛生要因と動機付け要因を洗い出したら、それらを解消するためのオンボーディング施策を考えます。人の顔と名前が一致しない中途入社者が多いのであれば、「プロフィールブック」を制作する、他部署の人との交流が少ない中途入社者が多いのであれば、シャッフルランチの導入などが考えられます。
オンボーディング施策は、次の「3つのC」の観点で考えるのがポイントです。
-
- キャスト(Cast)——誰が何をするのか、「役割」を明確にする
- 誰が何をするのかが曖昧だと、どんなオンボーディング施策もうまくいきません。効果的な施策を考えるのはもちろんですが、役割分担を明確にすることが重要です。「オンボーディングの責任者は誰で、サポート役は誰なのか」「人事は何をするのか」「現場のマネジャーはどのような役割を担うのか」「誰が人間関係の橋渡し役になるのか」など、オンボーディングに関与する人の役割は明確に決めましょう。
-
- コミュニティ(Community)——職場内で「横のつながり」をつくる
- 新卒は一斉に入社するため、自然と「同期」のコミュニティが生まれます。一方で、中途入社者は入社のタイミングがバラバラで「横のつながり」が生まれにくく、疎外感を覚える人も少なくありません。そのため、オンボーディング施策を考える際は、職場内で横のつながりをつくれるような工夫が必要です。
- たとえば、中途同士や同じ年次同士で、ランチや飲み会などの機会を設けるのは効果的です。つまずいたときに相談できたり、悩みに共感してもらえたり、アドバイスをもらえたりするコミュニティに属することで、中途入社者の組織への適応が促され、早期にパフォーマンスを発揮できます。
-
- コンテンツ(Contents)——自分と会社を見つめ直す「節目」をつくる
- 入社してしばらくは、誰でも「本当にこの会社に入ってよかったのだろうか」とモヤモヤした気持ちを抱えながら働いています。しかし、中途入社者は現場配属が早いこともあり、日々の業務に必死となり、その「答え」を見つける機会がありません。だからこそ、中途入社者には「自分と会社を見つめ直す節目」を意図的につくってあげることが大切なのです。
- 私がオンボーディングのコンテンツとしてよく提案しているのが、「3monthプレゼン」です。これは、中途入社者が入社3ヵ月後のタイミングで「この会社に入った理由」「この会社の良いところ」「この会社の改善すべきところ」の3点を現場の社員にプレゼンするイベントです。自分と会社を見つめ直す節目を設けることで、モヤモヤした気持ちが晴れ、前向きなモードの醸成につながります。