今回の担当
岡部 宏章(おかべ ひろあき)
Great Place To Work Institute Japan
新卒で人材派遣会社に入社し、買収企業のPMI(Post Merger Integration)を担当する部署で事業の基盤作りや組織開発業務に携わる。2021年にGreat Place To Work Institute Japanに参画し、営業を担当。「働きがいのある会社」調査の提供や、認定・ランキングの普及に努める。
コンカー:管理職と若手のコミュニケーションチャンネルを多数設定
まずは、2020年・2021年版日本における「働きがいのある会社」若手ランキングの中規模部門で1位に輝いたコンカーの取り組みを紹介します。
コンカーは、米国に本社を置く外資系企業です。経費精算、請求書処理、出張業務といった間接費に関わる業務のクラウドサービスを提供しています。2010年から日本市場に参入し、さまざまな業界・規模のお客様へサービスを展開しています。またコンカーは、日本における「働きがいのある会社」ランキング中規模部門において7年連続1位を獲得しているほど、従業員の働きがいに取り組み続けている企業でもあります。
コンカーが特徴的な点は、積極的な情報開示と権限委譲を行っているという点です。経営情報だけでなく、ビジョンの実現に向けてどんな戦略を打っているか、実現に向けてどんな課題や制約条件があるのかを、トップから従業員へしっかりと伝えています。それは、従業員への信頼の1つの証ともいえますし、徹底的な情報開示すればするほど、従業員側から会社に対する信頼感とロイヤリティが高まっていきます。
また、情報開示だけでなく権限移譲も両輪として重視しており、経験が浅い若手従業員でも自律的に動きやすいような環境をつくることに成功しています。
さらに、管理職と若手のコミュニケーションチャンネルを積極的に増やしてきた点もすばらしいです。たとえば、在宅勤務にシフトしたことでコミュニケーションの頻度が下がったコロナ禍直後、「“絆”の貯金」のない入社1年未満の従業員などのために行った「絆ミーティング」です。絆ミーティングでは毎週30分、従業員を代わる代わるゲストとして招き、その人にスポットライトが当てられる場が設けられたそうです。
その他にも、「タコランチ」という制度でコミュニケーション機会を増やしました。これは「他部門の管理職とランチをとる制度」です。他部門の管理職とのコミュニケーションということで「タコランチ」という呼び名になったそうです。さまざまな部門の管理職とランチをしながら気軽に話す機会をつくり、上司との関係性やキャリアの相談など、直属の上司には話しにくいことを話せる機会となっています。
タコランチから派生した「タコ巡り」という取り組みもあります。経営層を含めた管理職が20分ずつの3セッションで大勢の新入社員と話すというもので、意気投合したら次回は悩みの相談をしてもらうなど、対話の機会を積極的につくっています。
同じ部署の先輩の他に他部署の先輩がメンターとしてつく「タメ制度(他部署メンター)」という制度も、新人・若手のコミュニケーションチャンネルを増やすのに一役買っています。他部署のメンターには仕事と直結しない面での相談相手になってもらえます。
このように、年次が浅い従業員が会社に早くなじめるように、たくさんのコミュニケーション機会を提供しているのはすばらしいと思います。