今回の担当
三輪 慶(みわ けい)氏
Great Place To Work Institute Japan
新卒で国内大手SIerに入社。2017年よりGPTW Japanに参画し、コンサルタント職として中小~大手まで幅広く顧客を担当。働きがいのある職場を目指す多くの企業の調査分析、経営層への提言と支援を入社以来一貫して行っている。
iYell:自社の理念・カルチャーを従業員の手で守っていく制度を導入
まずは、2024年版のベスト100・中規模部門にランクインした「iYell(イエール)」の事例です。iYellは、金融機関と住宅事業者をつなぐ住宅ローンプラットフォームを運営しており、これまで7年連続でGPTWのランキングに選ばれています。
「何をするかより誰とするか」という経営理念を大切にしており、社員全員がいっしょに幸せに過ごすことを企業の究極の目的として定めています。この社員ファーストの経営姿勢は、結果的に回り回って必ずお客様の幸せにもつながると信じています。
この理念浸透のため、同社はさまざまな取り組みを行っています。
「iYellists7」と呼ばれる文化幹部がおり、社員の代表として経営幹部との橋渡しを担っています。この文化幹部は毎年全社員投票によって選出され、ビジョンの達成や働きがい向上に向けて社員が実現したいことのサポートを主な役割としています。一般的に、組織づくりの責任は部長やCxOなど組織上の事業幹部が担いますが、それらとは別に文化に対する責任を担うポジションが存在している点は特徴的でしょう。
文化幹部を通じて同社は「iYellのビジョンや価値観に共感した社員が最大限力を発揮できる居場所をつくる」ために経営目線・社員目線の両軸で活動を行っており、過度な事業推進のために文化を壊してしまうなど、経営が当初の考えと違った方向へ進まないようにしています。
また文化幹部の存在によって、理念がいかに大切であり、文化は上層部が一方的につくっているものではなく、社員とともにつくり上げていくものであるというスタンスを伝えることができています。
さらに「何をするかより誰とするか」という理念を守るため、採用には非常に気を遣っており、価値観のマッチを最重視しています。特に働く中で何をモチベーションとしているのかを丁寧に聞いています。たとえば、採用サイトには就職希望者に価値観を尋ねる設問が9問あり、すべての価値観が合致しないとエントリーができません。通常の採用では、100人の応募者の中から1人採用できるかどうか、という大変高い採用基準を置いています。
そのため、採用の大きな役割を担っているのがリファラル採用であり、所属する社員が理念にあっているだと感じる仲間に声をかけてスカウトするケースが非常に多いといいます。実際、入社した割合の53%がリファラル採用によるものであり(2024年4月時点)、採用にかかる費用も抑えることができています。
入社後には、さまざまな研修によって理念浸透を図っており、その理念を体現した人を毎月表彰しています。
こうした取り組みの結果として、離職率は4%程度(2024年4月時点)と、業界平均と比較してとても低い数字になっています。離職するケースも起業など前向きなものであり、退職した後も現職社員同士とは交流が続くほど良好な関係を築けているとのことです。