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人事労務事件簿 | #55

飲食店の非混雑時間帯において休憩としてきた時間、実態は労働時間と判断(東京地裁 令和3年3月4日)

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 労働時間に応じて一定以上の休憩時間を与えることが、労働基準法で定められています。しかし、今回取り上げる事案では、休憩時間にも実態として労働が生じていたことが裁判における争点の1つになりました。一般的な感覚としても、労働が生じては休憩時間ではないだろうと思いますが、裁判所はどこを見て休憩時間にならないと判断するのでしょうか。そこから従業員に与える休憩について再確認してみましょう。

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1. 事件の概要

 本件は、被告(以下「Y社」)と労働契約を締結し就労していた原告ら(以下「X1」「X2」)が、Y社に対し、労働契約に基づき、未払割増賃金等を求めた事案です。

 今回は、さまざまな争点の中から、休憩時間の取り扱いの判断について取り上げます。

(1)当事者等

 Y社は、食品の製造、加工、販売、輸出入および飲食店の経営等の事業を行う株式会社です。

 Y社は、広島風お好み焼き等を提供する「A」という名称の飲食店として、平成25年12月頃B1店(以下本件B1店」)を開店し、平成29年4月頃にはB2店(以下「本件B2店」)を開店しました。

 X1は、平成25年10月1日から平成30年10月5日まで、Y社との間で労働契約を締結し、本件B1店および本件B2店等においてY社に労務を提供していました。

 X2は、Y社との間で、平成29年1月11日から同年2月末日までの間は時間給制の有期労働契約(アルバイト)、平成29年3月1日から平成30年12月末日までは月給制の無期雇用契約(正社員)、平成31年1月1日から同年5月31日までは時間給制の有期労働契約(アルバイト)を締結し、本件B1店および本件B2店において、お好み焼き等の調理、接客、店舗の片づけ等の業務に従事し、Y社に労務を提供していました。

(2)X2の雇用契約書の記載等

 Y社とX1は、平成25年10月1日、期間の定めのない労働契約を締結しましたが、Y社とX1の間で雇用契約書等の契約書が交わされたことはありません。

 Y社とX2は、平成29年3月1日から正社員として期間の定めのない労働契約を締結しており、X2が平成29年6月21日付で署名した「雇用契約書」と題する書面(以下「本件雇用契約書」)には、おおむね次の記載があります(一部省略)。

雇用内容:正社員

雇用期間:期間の定めなし

就業時間:
  • 【始業終業の時刻等】1ヵ月単位の変形労働時間制・交代制として、当月の勤務時間は前月末までに勤務表により指定する。
  • 【休憩時間】原則120分とするが、勤務表により指定する。
  • 【所定時間外労働の有無】有
  • 【休日】1週当たり1日以上とし、当月の休日は前月末までに勤務表により指定する。

(3)X1の労働条件通知書の記載等

 Y社が、X1に関し、平成29年1月頃作成した「労働条件通知書」と題する書面(以下「本件労働条件通知書」)には、おおむね次の記載があります(一部省略)。

契約期間:期間の定めなし

就業の場所:当社店舗内

従事すべき業務の内容:店舗内スタッフ(調理、ホール)

始業、就業の時刻、休憩時間、就業時転換、所定時間外労働の有無に関する事項:
  • 【始業・終業の時刻等】1ヵ月単位の変形労働時間制・交替制として、当月の勤務時間は、前月末までに勤務表により指定する。
  • 【休憩時間】原則120分とするが、勤務表により指定する。ただし、業務の都合上、休憩時間を変更する場合がある。

(4)就業規則(休憩の箇所のみ抜粋)

(休憩)
  • 第30条休憩時間は2時間とする。
  • (中略)
  • 3第1項の規定にかかわらず、第29条に基づき1ヵ月単位の変形労働時間制により労働させる場合の休憩時間は、同条に定めるとおりとする。

(5)Y社の各店舗の休憩時間の状況

 Y社の各店舗において、ランチタイムの営業時間は14時まで、ディナータイムの営業時間は17時からとされていました。

 14時直前に来店した客に対しては、食事が終わるまで接客を続けており、その後片付けを行うなどしており、ランチタイムの客が完全にいなくなるのは、おおむね14時15分頃から14時30分頃でした。

 また、Y社の各店舗においては、17時からのディナー営業に備え、16時20分頃には、鉄板の火入れを行うことが業務として定められていました。

 さらに、ランチタイムの営業時間とディナータイムの営業時間の間に、月に1回程度、全正社員を集めたミーティングが行われることもありました。

(6)X1の状況

 X1は、ランチタイムの営業時間とディナータイムの営業時間の間の時間帯に、ディナーの仕込み、配送される食材の受け取り、不足食材の買い出し、予約の受付、営業時間の問い合わせおよび他社とのやり取り等の電話対応、シフト表の作成、業者との打ち合わせ等の業務を行っていました。

 特に、出勤した日は毎日、ディナーの仕込み、配送される食材の受け取り、電話対応を行っていました。

 食事を取る際は、店舗のバックヤードに置かれている電話のすぐ横で食事しており、待機しているような状況でした。

 同時間帯は、アルバイトは退勤となり、勤務するアルバイトがいないため、正社員が対応していましたが、B2店で全社員ミーティングがある際は、B1店ではアルバイトが電話対応等の業務を行っていました。

(7)X2の状況

 X2は、ランチタイムの営業時間とディナータイムの営業時間の間の時間帯も、ランチの片付け、おつりを用意するための銀行での両替、ディナーの仕込み、配送される食材の受け取り、不足食材の買い出し、予約の受付や営業時間の問い合わせおよび他社とのやり取り等の電話対応等の業務を行っていました。

 特に、出勤した日は毎日、ランチの片付け、ディナーの仕込み、配送される食材の受け取り、電話対応を行っていました。

 同時間帯は、アルバイトは退勤となり、勤務するアルバイトがいないため、正社員が対応していました。

 X2は昼食の際に店舗外へ出ることもありませんでした。

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この記事の著者

坂本 直紀(サカモト ナオキ)

人事コンサルタント、特定社会保険労務士、中小企業診断士、坂本直紀社会保険労務士代表社員。就業規則作成・改訂、賃金制度構築、メンタルヘルス・ハラスメント対策社内研修などを実施し、会社および社員の活力と安心のサポートを理念として、コンサルティングを行う。 ホームページに多数の人事労務管理に関する情報、規定例、...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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