本イベントの前半では、Scrum Inc. Japan株式会社 HR Scrum Masterの庭屋一浩氏が、人事向けに「アジャイル」および「スクラム」とは何かについて解説を行った。
スピーカー

庭屋 一浩(にわや かずひろ)氏
Scrum Inc. Japan株式会社 HR Scrum Master
サイボウズ株式会社で人事を務める中、スクラムに出会い社内普及を推進。2021年より現職。人事の立場から組織全体へアジャイルやスクラムを展開中。人事コミュニティ「人事ごった煮会」代表。
アジャイルとは:変化に適応し、顧客価値を生み出す「考え方」
アジャイルは、ソフトウェア開発業界で生まれた考え方である。背景には、従来の「ウォーターフォール」と呼ばれる計画主導型プロセス(最初に最終工程までの計画を立て、その計画どおりに作業を進めて成果物を出す手法)では、開発をうまく進められない事例が多く出てきていたことがあった。
そこでより良い方法が世界中で模索される中で、2001年、アメリカのスノーバードに開発者が集い、彼らの考案したフレームワークなどに共通する価値観を言語化した。それが「アジャイルソフトウェア開発宣言(アジャイルマニフェスト)」である。この宣言が、アジャイルがソフトウェア開発のみならず、経営など多様な分野で活用されるきっかけとなった。

アジャイルソフトウェア開発宣言では、次に挙げる4つの核となる価値観が提唱された。
- プロセスやツールよりも、個人と対話
- 厳格に決められた仕事の手順を守るよりも、常にチームメンバーと対話し、状況に合わせて最適な行動を模索する。
- 包括的なドキュメントよりも、動くソフトウェア
- 完璧な設計書よりも、顧客から頻繁にフィードバックを得るために、実際に動くものを少しずつつくり、見せていく。
- 契約交渉よりも、顧客との協調
- 利害関係者と対立するのではなく、顧客の目標達成のために協調し、協力し合う。
- 計画に従うよりも、変化への対応
- 事前に立てられた計画に固執するのではなく、常に発生する変化を受け入れ、それに対応していく。
庭屋氏はこの4つの価値観を踏まえ、アジャイルとは何かを一言で言い表すと「変化に自分たちが対応しながら、顧客により良い価値を提供し続ける考え方といえるでしょう」と説明。併せて、アジャイルは考え方であるため、特定の手法ではないことを強調した。