キャリアを阻む「見えないバリア」と「諦め」の正体
社員が未来のキャリアを描いたにもかかわらず、行動に移せない背景には、多くの場合、個人的な理由だけでなく、組織や環境が生み出す「見えないバリア」や、それによって生まれる「諦め」が存在します。
(1)組織に内在する「見えないバリア」
年代別、性別、ポジション、雇用形態などによって見えないバリアは存在します。それはたとえば次のような形で現れます。
- ジェンダーによるバリア:「女性は昇進よりもワークライフバランスを重視するだろう」といった無意識のバイアスや、「残業ができない人に管理職は難しい」といった、実際にその属性の人が挑戦しにくい環境(長時間労働前提など)。
- 年齢によるバリア:「〇歳を過ぎてからのキャリアチェンジは難しい」「〇歳を過ぎると会社から期待されなくなる」といった、無意識のバイアスや期待の格差。
- ポジションによるバリア:「現場の人は、経営層の考えを理解する機会がない」といった、情報の格差。
- 雇用形態によるバリア:「非正規社員には重要なプロジェクトは任されない」といった、情報や機会の格差。
- 心理的な安全性のバリア:挑戦して失敗した人が不当に評価を下げられた事例が共有されることで、「リスクを取るくらいなら現状維持でいい」という空気感が生まれる。
(2)社員自身の「諦め」
これらのバリアは、社員の中に次のような「諦め」を生み出します。
- 身の丈思考:「自分のポジションならこれくらいでいいだろう」と、現状維持を正当化してしまう。
- 時間・資源の不足:「今の業務で手一杯で、描いたキャリアのための学習や行動の時間は取れない」と、行動を先送りしてしまう。
人事の役割は、これらのバリアと諦めを「可視化」し、制度と文化の両面から取り除く「交通整理」を行うことです。

