バラバラでも画一的でもない、楽天のカルチャーは「2階建て」
次に飯田氏が挙げたテーマは、組織が拡大する中で、トップダウンの強力な統制と、現場からイノベーションが生まれるような余白をいかに両立させるか。この難題に対し、両社は独自のモデルを構築している。
飯田 悠司(いいだ ゆうじ)氏
株式会社リーディングマーク 代表取締役社長
2005年東京大学経済学部へ入学。仕事にやりがいを感じる日本人が18%しかいないという状況に危機感を覚え、在学中の2008年1月に起業。現在は6000社、200万人が利用する「ミキワメAI」シリーズや採用人気ランキングTop100社の約9割が利用する「ミキワメ就活」を中心としたHRサービスを展開中。
「イノベーションを通じて、 人々と社会をエンパワーメントする」をミッションに掲げる楽天グループでは、単一の文化からはイノベーションは生まれないという考えから、多様性を大切にしているという。
「かつては、買収した企業の社員に統合プロセスの一環として、画一的なルールの遵守を求めていた時期がありました。しかし、それでは現場の心が離れていってしまった」(小林氏)
そこで現在は、「2階建てのカルチャー」へと方針を転換。楽天グループとしての共通の価値観やミッションを1階とし、その土台の上に各事業や買収企業の独自のカルチャーがあるという考え方だ。
「共通の土台の上にそれぞれのユニークな価値観が乗ることで、イノベーションが生まれます。反対に、土台がないと単なるバラバラの組織になってしまう。今は、『楽天のミッションは守ってください。そのうえで、それぞれの事業の特性を活かしてインパクトを出してください』という方針にしています」(小林氏)
経営会議の25%を「人事戦略」につかうコカ・コーラ ボトラーズジャパン
一方のコカ・コーラ ボトラーズジャパンでは、経営陣のコミットメントを確保するために、役員会の時間の使い方を抜本的に変更。毎週行われる役員会のうち、月に1回は「人事戦略のみ」を議論する時間を設けているという。
「これまでは、ビジネスの優先課題が議論される中で、人事のアジェンダを入れ込むことに苦労していました。どこか、『ビジネスの課題は自分事だが、人事の課題は人事部の仕事』という感覚が経営層にあったのです。前社の経験からも、人事とビジネス部門との言語の違いを感じていました。
しかし、役員会議の時間のうち25%を人事のアジェンダに使い、データという共通言語に基づいて人事課題を話すことで、各部門のトップが自分事として捉えられるようになりました」(東氏)
さらにコカ・コーラ ボトラーズジャパンは、女性管理職比率やサクセッサー育成計画の達成度といった人的資本に関する指標を執行役員の業績評価(KPI)に組み込んだ。これは単なる目標ではなく、未達成であればボーナスが減額されるという厳しいルールだ。
「人事が細かいルールをつくるのではなく、人材に関する方針と目標だけを人事と経営で握る。そして、どうやるのかというHowの部分は、各部門の特徴や状況をよく知るトップがコミットする。これが現場の『余白』になるのです」(東氏)
前編となる本稿では、経営の意思を現場に浸透させるための方法や、イノベーションにつながる組織の余白のつくり方をお届けした。後編では、AI時代の組織の在り方や、製造業という堅実性が求められる現場でいかに「変革リーダー」を育成するかなど、さらに白熱した議論の模様をお届けする。

