堅実な現場から「変革リーダー」をどう発掘・育成するか
東氏が着手したのは、1人のカリスマリーダーに頼るのではなく、部長、課長、リーダー、一般職の各階層から変革のポテンシャル人材を選抜し、育成する仕組みだ。企業内大学「コカ・コーラ ユニバーシティ ジャパン(以下、CCUJ)」として2020年から継続的に取り組んでいる。
「CCUJは、部門を超えて集まった社員が約6~10ヵ月のプログラムを通して変革の基礎を学ぶプログラムです。当社には、約1万4000人の従業員がいて、セールスセンターは300拠点、工場は17箇所あります。それぞれの場所で変革リーダーを育成しても、その人たちが協力し合うことは難しい。CCUJの中で顔を合わせ、ぶつかり合ったり連携したりすることで、戦友がつくれるのもメリットです」(東氏)
ここで気になるのが、「プログラムに参加する社員をどう選抜しているのか」という点ではないだろうか。同社では、各部門が女性管理職やサクセッションプランなどを議論する「人材会議」を実施している。そこで、変革リーダーに求める5つのケイパビリティのポテンシャルを持っている人を洗い出し、選抜する仕組みだ。
これにより、オペレーションを重視する現場からも、変革をリードできる素質を持った人材を引き上げることに成功しているという。
ボトムアップの組織変革は可能なのか
セッションの終盤では、参加者から質問が投げかけられた。1つは、「人事からボトムアップで組織開発や人材開発を提案しても、経営やミドル層に課題感が伝わらず、具体策として落とし込まれない」という切実な悩みだ。
これに対し、東氏はコカ・コーラ ボトラーズジャパンで行っている施策を紹介した。
「当社では、『オペレーショナル・エクセレンス活動』を行っています。これは、現場で小さな改善のアイデアを『I-Card』として集める活動です。『この装置が危ない』『危険だからここにある機材を移動してほしい』など、小さなことでもよいので提案してもらっています。I-Cardを受けとった担当部門は、それぞれの現場でどのようなアイデアが出ているのかを確認し、上にあげる仕組みです」(東氏)
さらに同社は、このI-Cardで集められた優れたアイデアをもとに、1年に1度プレゼン大会を行っている。それぞれのグループが、自分たちが行った改善がどのように業務やKPIの向上に役立ったのかを発表して、表彰を行っているという。
一方の小林氏は、ピアレコグニションツール「R-Star」を紹介した。これは楽天の価値観・行動指針である「楽天主義」に基づいた称賛を社員同士で送り合う仕組みで、もともとは技術部門のエンジニアが自発的に開発したシステムだが、今では一部組織を除き、全社的に導入されている。
「これによって、部門の垣根を超えたコミュニケーションと称賛がどれくらい発生しているかを可視化しています。イノベーションは部門間の掛け算から生まれるため、異なる視点を持つ者同士がつながるきっかけをデザインすることが重要なのかなと思っています」(小林氏)
両社の回答を受けて飯田氏は、現場の声を拾い上げて、ベストプラクティスを確認できるような仕組みをつくることで、トップダウンを待たずとも組織全体に広がることが期待できるようだとまとめた。
飯田 悠司(いいだ ゆうじ)氏
株式会社リーディングマーク 代表取締役社長
2005年東京大学経済学部へ入学。仕事にやりがいを感じる日本人が18%しかいないという状況に危機感を覚え、在学中の2008年1月に起業。現在は6000社、200万人が利用する「ミキワメAI」シリーズや採用人気ランキングTop100社の約9割が利用する「ミキワメ就活」を中心としたHRサービスを展開中。
人事の楽しさとAIの可能性
最後にセッションの締めくくりとして、両氏は会場へメッセージを送った。
「人事やマネジメントに正解はありませんが、そこが楽しさだと思っています。今回お伝えしたような事例がみなさんの会社で活きるかは分かりませんが、試す価値はあるのかなと。自社流でやってみたらどうなんだろう、どうカスタマイズしたら人材や組織が動くんだろうと考えて、それぞれの企業が成長することを祈念しています」(小林氏)
「これまで1万人規模の会社では、現場1人ひとりに寄り添った人事施策は不可能だと思われていました。しかし、それを可能にするのがAIだと思います。一方で、私を含めて人事はテクノロジーに弱い人が多い。人事担当者こそ、テクノロジーに精通して、AIで何が可能になっているかをキャッチアップし、自らが変革リーダーになる必要があると思っています」(東氏)

