25年の歴史を持つエンジニア必携の認定資格
1984年に米国でスタートしたシスコシステムズ(以下、シスコ)は、ネットワークの根幹となるルーターやスイッチの機器販売だけでなく、テレビ会議やIP電話、Web会議システムなど、様々な製品カテゴリーにおいてシェアNo.1を誇っているという。
そんなシスコでは、ネットワーク機器ベンダーとして製品やソリューション、サービスの提供のみならず、ITエンジニア育成に向けて、認定資格を中心とした教育プログラムを展開している。
「製品の販売とともにサービスの導入や構築を支援する中で、シスコとして製品のスペックやサービスの内容は保証できても、エンジニアのクオリティを保証できるものがありませんでした。『シスコの製品を使って、すごくいいサービスを提案できますよ』と言っても、エンジニアのクオリティを保証できなければ、サービスの保証にはつながりません。そこで人材の保証もしようと、1993年よりエキスパートレベルの認定資格『CCIE』の提供をスタートしました」(岡氏)
シスコが提供する教育サービスは、大きく以下の4つに分けることができる。
- エンジニア向け:シスコ技術者認定・関連トレーニング
- パートナー(代理店)向け:認定・関連トレーニング
- 製品、テクノロジートレーニング
- 教育団体向けトレーニング
これらをチャートで表すと次の図になる。
トレーニングは、シスコが直接提供するほかに、ネットワーキングアカデミーなど3つの形態で提供されている。
「ネットワーキングアカデミー」は教育団体向けのトレーニングで、教育機関を通じて提供されている。ただし、一部はオンライン提供でのセルフスタディもある。
「オンラインセルフスタディ」は、シスコオンラインストアでコンテンツを購入して学習するeラーニングプログラム。日本語訳されているものがあるが、英語のみのものもある。
「認定ラーニングパートナー」はスクール形式のトレーニングだ。日本語で勉強したいときには有力な選択肢になる。シスコ技術者認定、パートナー認定、テクノロジーなどの講座をスクール形式で提供している認定ラーニングパートナーは、現在7社ある。
「シスコで教育プログラムの展開を始めて25年経ちますが、今では180か国以上で開催し、すでにグローバルで延べ300万人を超える認定者を輩出しています」(岡氏)
シスコ技術者認定がトップランナーであり続ける理由
シスコ技術者認定は、1993年にスタートした。しかし、最初にリリースされたCCIEはエキスパートレベルの高度な認定資格だったため、すべてのエンジニアが受けられるようなものではなかった。
ところが、インターネットの普及にともない、ネットワークエンジニアの不足は顕著となる。そこで一般のITエンジニアや、これからネットワークに携わる初心者向けの資格として、1997年に「CCNA」、翌年に「CCNP」がスタートした。
このように、時代の流れとともにWireless、Security、Voiceと、トレンドのテクノロジーに合わせてラインアップを増やしていった結果、今では資格数は25にまで増えた。10の分野に対し、5つのレベルが設定されている。次図はその全容だ。
シスコではネットワークの知識はホットでなければならないという考えのもと、エキスパートとスペシャリストは2年、プロフェッショナルとアソシエイトは3年という再認定ルールを設けている。
「ご存知のとおり、ITの業界には技術のトレンドがあります。今ではセキュリティ、クラウド、オートメーション、ビジネススキル、IoTといったところでしょうか。同じく、資格にも流行り廃りがあるわけですが、シスコはITの根幹となるネットワークの資格なので、それにあまり左右されません。CCNAなどは常に人気トップ10位以内にランクインしてきました。どのような分野であっても、エンジニアを目指す方には必要な資格として認知されているため、今も認定者数が増え続けているのです」(岡氏)
また、岡氏は、シスコのどの認定資格をどれくらいの経験で取得すべきかについても説明。同社が提供している資格認定のロードマップ(次図)を示しつつ、あくまで目安とした上で、「エントリー」は0~2年、「エキスパート」は7年と述べた。
「弊社ではシスコの製品を扱う時間が長いので、新入社員でも早ければ1~2年でCCIEを取得するエンジニアもいます」(岡氏)
最新のシスコ技術者認定「CCNA Cyber Ops」とは
昨年、新たに開設された最新の認定資格およびトレーニングが「CCNA Cyber Ops」だ。これまでのシスコの資格では、シスコの製品を主な対象としていたが、CCNA Cyber Opsに関してはシスコの製品ではなく、一般のサイバーセキュリティの知識を学ぶことができるものになっているという。
CCNA Cyber Opsの認定試験は、「1. Understanding Cisco Cybersecurity Fundamentals (SECFND)試験番号 210-250」と「2.Implementing Cisco Cybersecurity Operations (SECOPS) 試験番号 210-255」の2つから成っている。1つめのFundamentalsはネットワークの基礎から学ぶコンテンツで、認定は必要なくちょっとしたセキュリティの知識を学びたいのであれば、Fundamentalsを受けるだけでも非常に勉強になるのではないか、と岡氏は強調する。
シスコではトレーニングを開発する際に、まず最初に対象職務を設定している。CCNA Cyber Opsでは、ネットワークエンジニア、セキュリティエンジニア、インシデント対応者からSOC(Security Operation Center)関連エンジニア、ネットワークセキュリティ監査員、セキュリティアナリストまで、幅広い職務をカバーしている。そのため、CCNA Cyber Opsの認定を受けることによって、「ネットワーク基礎」「セキュリティ概要」「組織のセキュリティシステムの監視力」「サイバー攻撃の検出能力」「サイバー空間の脅威への対応能力」といったスキルを身に付けられる。
また、シスコではサイバーセキュリティのエンジニアがグローバルで不足している現状を受け、同社CEOのチャック・ロビンス氏が1000万ドルを投じ、シスコグローバル セキュリティ スカラシップ プログラムをスタート。CCNA Cyber Opsのeラーニングコースと試験を、最大1万人に無償で提供するという。
「登録後、これまでのキャリアや学習経歴を問う、簡単なアセスメントに合格すれば、Cisco Networking Academyのカリキュラムを受講後、eラーニングのトレーニングと試験を受けることができます。英語なので敷居が高いと思われるかもしれませんが、ネットワーク関連用語は日本語訳したとしても、大半がアルファベットがカタカナになっているだけ。まだ募集している最中なので、ぜひみなさんもチャレンジしていただければ」(岡氏)
2020年の東京オリンピック・パラリンピックへの取り組み
岡氏によるシスコの人材育成施策紹介の後、同社 マーケティング本部 東京2020オリンピック・パラリンピック マーケティング担当の石丸美里氏が登壇。日本独自で行っているスカラシッププログラムについて紹介した。
「私たちシスコはロンドン、リオデジャネイロに続き、東京2020オリンピック・パラリンピックのネットワーク製品カテゴリーにおいて、オフィシャルパートナーを務めています。
ネットワーク製品(有線/無線LAN機器、ワイヤレスネットワーク機器、ビデオ会議用ネットワーク機器)の提供を通じて、他のオリンピックパートナーにより構築されるネットワーク基盤の支援はもちろんのこと、それに従事できるような人材やインストラクターを育成するとともに、オリンピック後にも継続できるようなレガシープログラムの構築に取り組んでいます」(石丸氏)
シスコ日本法人では2020年に向け、ITベーシックから情報セキュリティまでを体系的に学習できるスカラシッププログラムを2017年4月に立ち上げた。現在の対象者は学生がメインだが、徐々にターゲットを広げていきたいと考えているのだという。
「入門コースでは、『Introduction to Cybersecurity』と『Cybersecurity Essentials』という2つのプログラムを設けており、セルフラーニングでサイバーセキュリティの基礎知識を学んでいただきます。
続いて、基礎コース(対面講座式のコース)『CCNA Cyber Ops』へと進み、今後のキャリアや職務を見据えた知識とスキルを身に付けていただきます。『CCNA Cyber Ops』コースまで修了された方には、国内外のシスコやパートナー企業のご協力の下、インターンシップの機会を設けているほか、シスコが主催する世界最大級のITイベント『Cisco Live!』へご招待する予定です」(石丸氏)
今回紹介したシスコの育成プログラムに興味を感じた方は、以下のお問い合わせ先一覧よりアクセスしてみよう。