請求金額の交渉に胃が痛くなりそう
シミュレーションでは、他にも途中でいろんなイベントが発生する。例えば、仕様追加や機能縮小だ。仕様追加が発生すると、利用者と費用請求交渉をしなくてはならない。予想ステップ数や難易度が定められており、SEとPGの工数から費用を見積もり請求する。余裕を持って多めに請求すればいいように思うが、希望通りに通るとは限らない。利用者から「高すぎます」と拒否されることもあるのだ。再見積もりと再交渉が繰り返されると、時間はずるずると延びていく。交渉が折り合うような価格で請求する必要がある。
ややトリッキーなのはメンバーからの進言だ。納期が近づいてくると「プログラムレビューなんて非効率です」とレビューを軽視する意見が出てきたりする。メンバーから多様な意見が出つつも、リーダーは的確な判断をしていかなくてはならない。
城氏によると「リーダーがいつどのような事態を把握するかにより、プロジェクトの結果が変わってきます」とのこと。リーダーの采配でプロジェクトがいつ、どのくらいの費用ですむかが変わってくるというわけだ。
集合研修では数人でチームを組み、アサインやタスク割り当てを合議しながら設定していく。受講者の中には慎重に進めようとする人がいれば、強引に進めようとする人もいる。集合研修でいろんな意見を聞くのも勉強になりそうだ。eラーニングだと当然ながら完全に自分一人で判断していく。
アサインと進捗チェックを繰り返し、全ての開発が完成するとゴールとなる。すごろくなら「あがり」である。そのときに品質や予算、納期がどれだけ守られているかはリーダーの采配次第だ。
本番では高リスクで試せないマネジメント方法にトライできる
シミュレーションが終了すると、全体を通じて様々な結果が数値で示される。例えば、8月20日が予定納期だったのに、最終的には9月5日になれば納期が守れなかったことになる。予算も同様に目標の範囲で納められたか表示される。残業や休日出勤が増えればコストはかさむ。
メンバーのリーダーに対する評価も体制や残業といった観点で表示される。品質や納期、費用とはまた別の観点でプロジェクトを振り返ることになるだろう。他にも「利用者満足点」や「上司満足点」なども表示される。最終的にはスコアから総合ランキングが表示される。
それぞれに好みのアプローチやポリシーがあるかもしれない。優先度もまちまちだろう。例えば「私は絶対に残業はさせない」「ぼくは利用者満足度を何よりも優先する」というのも考え方としてはありだろう。その結果としてどうなるか、シミュレーションで結果が出る。初心者だとまずはプロジェクトを目標通りに達成するのが精いっぱいかもしれないが、自分のポリシーがどういう展開を生むのか確認できる。
城氏は「本番ではさすがに失敗できませんが、シミュレーションなら安心して失敗できます」と話す。例えばレビューを怠れば品質低下が生じ、結果的に工数が増えてしまうことがある。自分の決断がどのような結果となり自分に跳ね返ってくるのかが分かる。ここで積極的に失敗しておくのもいいだろう。
「知識があったとしても、実際に経験してみるとQCDのバランスを取る難しさに戸惑います。ここで経験を積んで知識を実践スキルに変換してみてください」(城氏)
昨今ではアジャイル開発も流行だ。そうした新しい潮流に対応しているかと市古編集長が質問すると、城氏は「プロジェクトマネジメントで計画するポイントは、開発プロセスにあまり依存しません。押さえておくべきポイントがあります」と話す。この講習ではプロマネがすべきことを把握するきっかけとできそうだ。
城 尚志(じょう たかし)
株式会社富士通ラーニングメディア
ナレッジサービス事業本部 第一ラーニングサービス部
2000年に株式会社富士通ラーニングメディアに入社し、Javaやオブジェクト指向設計などアプリケーション開発技術の教育を講師として担当。その後、富士通グループの開発現場に出向し、電子申請システムといったWebシステム構築プロジェクトやパッケージ開発プロジェクトを経験。現在は、富士通ラーニングメディアに復職し、現場で感じたプロジェクトマネジメントの重要性を伝えるため、プロジェクトマネージャの人材育成に携わっている。
[主な取得資格]Sun認定Webコンポーネントデベロッパ、PMP
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