突然の事業責任者に抜擢も慌てなかった理由
――最初はどのような立場でLUCRA開発に参加されたのでしょうか?
2017年2月にLUCRAの開発が始まったのですが、それまで私はGunosyのWeb事業部に所属していて、Gunosy.comや小さなWebメディアを開発していました。LUCRAの開発が始まるタイミングで、いち開発者としてジョインした形です。立ち上げメンバーは数名。すぐにエンジニアを数人採用しましたが、当初エンジニアは自分1人でした。
少人数でのスタートでしたから、エンジニアといえども案出しなどメディアの企画にも参加していました。ただ、LUCRAはまったく新しい事業モデルのサービスというわけではなかったので、若干参加していたという感じですね。事業モデルとしてはグノシーを参考にできましたし、ターゲットだけ20代女性に定め、デザインなどを行うといったことで進められました。
LUCRAのリリースは、開発が始まって3か月後の2017年5月末です。機能を絞り、最小限のものだけを提供しましたから、コンテンツの企画もライトでしたね。
――エンジニアとして参加した後、現在のようにLUCRAの事業責任者に就任されたのはいつですか。
2017年の夏です。最初のリリースやリリース直後は、企画者とエンジニアが厳密に役割分担されていたわけではなく、いっしょに企画や機能改善などもやっていましたから。それに、LUCRAに参加する以前にいたWeb事業部でも新しいメディアの立ち上げ・開発を行っていたので、まるっきり未経験のことをするというのでもなく、スムーズに行きました。むしろ未経験だったのはWebではなくアプリのサービスを作るところで、そちらのほうが「新しいことをやっているな」という感触でした。
――ということは、事業責任者に抜擢されても慌てたりしなかった。
基本的にはなかったですね。自分が見る範囲、負わなければいけない範囲が広がったことについては若干慌てましたけれど。それまでは開発リーダーとして開発スピードや品質に対して責任を負っていたのが、サービス全体の責任を負うことになり、リテンション(購読の継続率)やDAU(日々利用しているユーザー数)、売上などに責任を負っていくことになりましたから。
――売上を上げていくためのKPIは見えていましたか。
LUCRAの事業モデルはグノシーやニュースパスとベースは一緒なので、どの数字を改善すれば良いか、優先度は社内にアセットがありましたので、ほぼ見えていました。
――チームメンバーともその点は共有できていた?
KPIの分解や、どのKPIがどれくらいインパクトがあるかは共有できていました。だから、KPIがらみでメンバーが右往左往することはありませんでした。ただ、すごく細かな点――たとえば、ユーザー獲得の効率を見るときにCPIだけを見るのか、かけたコストに対してどれくらいユーザーが積み上がっているのかを見るのか、どの数字を見るのが正しいのか、といった調整はたくさんしました。
一方、戦略のところでは議論がたくさんありました。ボトムアップで数字を上げるために何ができるかを細かく調整してきた一方、大きな戦略についてはリリースして1年ほど作らずぼんやりしていた感じです。現在は、数か月前に決めた大きな戦略について、メンバーとコンセンサスを取りつつあります。