結婚・出産・育児と仕事の両立に逆風ばかりのIT業界
女性の結婚・出産・育児と仕事の両立は、IT業界に限った問題ではありませんが、フィールドで仕事をするITエンジニアで最も厚い年齢層は20代〜40代前半ですから、この話題にジャストミートします。おまけに、フィールドエンジニアは予期せぬトラブル対応などもあり、勤務時間がとっても不規則ですから、男女問わず「結婚なんて考えられない。ましてや出産育児なんて……」って思っている人も多いのではないでしょうか。
私も育児中は毎日時間に追われてヘトヘトでしたが、それは肉体的な疲れが原因ではありませんでした。子供のことと仕事のことを並行して考えるうちに「ToDoリスト」がどんどん膨らんでいき、母親としても社会人としても無力に思えてしまったこと。追い詰められて、どうにもやり場のない気持ちになっていったこと。そして、そんな葛藤を乗り越えることが、私を一番疲労させました。
結婚、出産、育児という人生の出来事に駒を進めていくことを考えたとき、やっぱり女性が不利であることは否めません。仕事の種類や扱うプロダクトによって環境は異なりますが、基本的にフィールドのITエンジニアの仕事は、時間が不規則で9時~17時というワークスタイルでないことが多いです。IT業界でテクニカルスタッフとして働く人材に、圧倒的に女性が少ないのは、そんな仕事の性質によるところが大きいはずです。
また、IT技術は目まぐるしく変化していくので、産休や育休を取得している間に、自分の技術力や経験が全く役に立たなくなるのでは? という漠然とした不安や、復帰してもイチから勉強しなければならないといった負担もあるでしょう。
仕事に復帰した後も、予期せぬシステムトラブルなどの緊急事態が発生しても、保育園のお迎えは待ってくれません。子供が急に体調を崩すこともあります。会社や同僚に申し訳ないという気持ちで早めに会社を出たり、休暇を取得したりというような事態が発生したりします。
そうして、キャリアを諦めてしまう女性は決して少なくありません。キャリアを取るのか結婚出産を選ぶのかという、とってもナンセンスな二者択一論はこんな状況から生じてしまうのです。
社会貢献だから堂々と休み、知識をアップデートしてやろう
私はそんな悩みや葛藤を何サイクルも体験してきました。だからこそ、「両方手に入れればいいじゃない!」って単純に思います。
まず、結婚休暇、産休、育休は今や社会が推奨する制度です。たとえ、向かい風があろうと、堂々と取得する強い心をもつことが何よりも大事です。少子高齢化の中で、大きな社会貢献をしていると思って堂々と休暇を取得してほしいです。
とはいえ、休暇を利用してキャリアに役立つ何かをプラスアルファする努力も、これからの時代には必要です。産休育休中は、自分のことや子供の世話でいっぱいいっぱいと思うかもしれませんが、仕事に復帰したら、その100倍時間に追われます。休暇中こそ、いろいろ挑戦ができるチャンスだと考えてみましょう。
職場復帰後、即戦力として会社や同僚に認知してもらうために、また自分自身のメンタルを良い状態でキープするために、休暇中に資格を取得してみるのはいかがでしょうか。産休育休前にはばりばり仕事をしていたわけですから、復帰後だって仕事へのプライドは保ちたいものです。それに大きく役に立つのが資格取得だと私は思うのです。
私は第一子の産休中は英語のブラッシュアップを行いました。技術とは直接関係はないけれど、普段は後回しにしていたことに取り組もうと思ったのです。第二子以後は、長期間の休暇は取得しませんでしたが、自社製品のバージョンアップに伴うマテリアル(資料やマニュアル)などを入手して目を通すなどは行っていました。
これらの経験は、業務に戻ったときに自信につながりました。資格の取得はしなかったのですが、今も「産休中に資格を取得して形に残しておけばよかった」という思いがあります。
だから私は皆さんに、
IT資格の場合、休暇中に新しい資格を取得するよりも、
すでに持っている資格をアップデートすること
を強くお勧めしたいです。「私は知識を常に最新の状態にアップデートしていますよ!」というアピールです。もちろん、それは自分の自信にもつながります。
最近では多くのITベンダが、完成度の高いeラーニングや、⾃宅で⼦供の面倒を見ながらでも勉強できるツールを提供しています。そんな便利コンテンツを駆使して知識をアップデートし、その「証明」を⼿に⼊れておくのです。
クラウドが促す働き方の多様化が女性のキャリアの追い風となる
ことIT業界に関しては、ここ数年で就業環境が大きく変化してきました。フレックスタイムが定着し、ワークアットホームなどの体制なども整ってきました。また、男性が育休を取得することも珍しくなくなりつつあります。
今後、システムのクラウド化がもっと整っていけば、さらなる変化もあると思います。システムのクラウド化はハードウェアの括りから人々を解放してくれますが、同時に、時間と空間の束縛からも解放するからです。ロケーションに依存することなく、セキュリティを担保したまま、社内システム環境にアクセスできることから、出社義務などもなくなり、ホームオフィス化も加速的に進んでいくでしょう。
雇用形態は多様化し、能力主義的な方向へと加速していくように感じます。つまり、個人が持つ能力を組織に買ってもらうというスタイルへと変化していくでしょう。たとえば、企業と個人のコントラクト(契約)によって仕事が成り立つ時代になることが予想されます。欧米では勤めていた会社をいったん退職して、その会社と新たにコントラクトを個人的に結んで、同じ会社で同じ仕事を続ける人が増えています。
そこで必要となってくるのは、自分の能力を高く評価してもらうためのツールだと思いませんか? それを客観的に「証明」できるものの1つが、最新バージョンにアップデートされた「資格」なのです。結婚休暇・産休・育休をキャリアのネガティブ要因として考えるのではなく、近い将来やってくる雇用形態の多様化に対応するための機会として、むしろポジティブ要因として上手に利用し、セルフデベロップメントをしてみてはいかがでしょうか。