過去のジレンマを払拭するために生まれたKAKEAI
――KAKEAIは上司と部下の関係づくりを支援するツールだと伺っていますが、なぜ開発しようと思われたのですか。
私はリクルートで人事をしていました。その当時の主な仕事は2つあって、1つは「現場のマネージャーが部下の力をちゃんと引き出せるよう働きかけること」、もう1つは「配置換え」です。それぞれにジレンマがありました。
前者では、研修をしたり、事例を共有したりして、いろいろなアプローチを取るのですが、最終的には現場のマネージャーの行動次第なので、人事として介入しきれません。後者では、メンバー個人の希望や特性を活かす形で配置換えを行いたいと思っても、現実には受け入れ側の要望や事業環境などが優先されて、運の要素を排除しきれないのです。
これらのジレンマは、人事として組織の中でいくらがんばっても解消できるものではありません。そこで、この課題にコミットして解決に取り組むためにKAKEAIを創業しました。
――なるほど。とはいえ、KAKEAIは人事だけでなく現場のマネージャーの方にとって有用なものなんですよね?
そうです。私自身、人事で現場のマネージャーをしていたんですね。リクルートでは年に1度、360度評価があるのですが、そこでメンバーから無記名で「あなたには誰もついて行きたくないって、知ってます?」って書かれたんです。
私は人事として他のマネージャーに対して「こう部下と接しましょう」と言っていた立場で、それなりに自分はうまくマネジメントできていると思い込んでいました。大ショックでしたね。それがきっかけで鬱になり、会社を2か月間休みました。
いろいろ考えているうちに、「私は自分がされてうれしいことをしていただけで、それが本人にとって意味のあることなのかどうかは、分かっていなかったのか」と思い、「メンバーは一人ひとり違う人間なんだから、それぞれに合わせたやり方を考えなければいけなかった」という当たり前のことに気がつきました。
――そこで現場のマネージャーと部下の関係を改善するツールを作ろうと思われたのですね。