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パーソルのピープルアナリティクス《前編》――分析結果の見方を人事に理解してもらうと思わぬ気づきも出てくる

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2020/07/01 06:00

 データを人事の意思決定に活かすためのピープルアナリティクス。この連載はこれからの実践を計画している読者に向け、用意した図を紹介してもらいながら具体的な取り組み内容を解説してもらっている。対談のゲストとして、3回目はパーソルホールディングス株式会社の藤澤優氏を迎え、現場の人事にどんな知見を提供しているかを聞いた。(対談はオンラインで実施)

藤澤 優

藤澤 優(ふじさわ まさる)氏
パーソルホールディングス株式会社
大阪大学大学院人間科学研究科修了。前職はマーケティングリサーチ会社でリサーチャーとしてデータの収集・分析業務に従事。その後、パーソルホールディングスに中途入社し、人事におけるデータ活用促進や経営幹部層のサクセッションプラン企画・運用にも従事。調査が好き。ハンドボール好き。海外ドラマ好き。

鹿内 学

鹿内 学(しかうち まなぶ)氏
博士(理学)。株式会社シンギュレイト 代表
働く中でのコミュニケーション・データから関係性に注目した次世代ピープルアナリティクスにとりくむ。代表を務めるシンギュレイトでは1 on 1や会議で利用できる可視化ツールを提供中。働く組織の科学と実用をめざす。情報量規準が好き、サッカー好き、漫画好き。

人事と接するときのスタンスは社内コンサルタント

鹿内学氏(以下、鹿内):ではさっそく、データの図からいきましょう。

藤澤優氏(以下、藤澤):グループ内のある組織では、働く場所として他者にどれだけ自社を奨めることができるかを指標化した「自社ロイヤリティ指標」を調べています。その自社ロイヤリティ指標と顧客満足度を細かい項目に分解し、それぞれの項目との相関を見たのが図1です。

図1:顧客満足度(CS)と自社ロイヤリティ指標(Loyalty)の関係(出典:パーソルホールディングス)
図1:顧客満足度(CS)と自社ロイヤリティ指標(Loyalty)の関係(出典:パーソルホールディングス)
[画像クリックで拡大表示]

 対角線を挟んで下半分がスコアの分布、上半分が項目間の相関係数を示しています。スコアは個人ではなく、組織別の平均スコアです。分析対象サンプル数は少ないものの、赤い線で囲んだ部分が自社ロイヤリティ指標(Loyalty)と顧客満足度(CS)との相関係数を示していて、顧客満足度と自社ロイヤリティ指標にはほぼ正の相関があると考えてよいとわかりました。

鹿内:分布の形が対角線上にマッピングされているのが面白いですね。藤澤さんたちのチームは様々なデータを扱うと思いますが、最初にこの分析を行うのですか。

藤澤:人事と議論するときには散布図などによるデータの可視化から始めることが多いです。分布を見てから関係がありそうな変数を落とし込んでからモデルを作るようにしています。いきなりモデリングから取りかかることはありません。

鹿内:(前回対談した)ソフトバンクの御園生銀平さんも散布図を作って、項目同士の関係性を確認していました。この図を見る上で、重要だと思うことはどんなことでしょうか。

藤澤:項目同士にどんな関係性があるかを確認することです。グループ分けをすると様々な要素の相関があることがわかるので、それぞれの相関を比較することが重要だと思います。また、散布図を確認することで、相関係数だけでは見逃してしまう、非線形の関係や外れ値の把握に役立ちます。

鹿内:この図はチームの中で議論するためのものですか。それとも経営層にも見せている?

藤澤:チーム内や現場の人事との議論で使います。役割分担は私たちのチームが素材を提供し、人事に解釈してもらうというものです。経営層には情報量が多いので見せておらず、より要点を絞った内容を提示します。

 私たちは現場の人事への社内コンサルタントだとイメージしてもらえればわかりやすいと思います。人事にはデータを用いてやりたいことはあるのですが、どうすればいいかわからない。そこで図1のようにアウトプットを出して、交通整理をするのが我々のチームの役割です。経営層と合意するための資料を作るのは人事の役割です。ただ、経営層から人事がフィードバックを受けた後、必要に応じて人事にアドバイスをすることもあります。ですから、この図を最初に見せたのも現場の人事に対してでした。

鹿内:藤澤さんのチームの顧客はグループ会社の人事ということですか。

藤澤:そのとおりです。グループ会社の人事に加え、ホールディングスの人事も私たちのお客様です。人事のミッションは採用から育成まで多岐にわたります。依頼を受けて、データの収集、管理、分析の知見を提供します。今回の依頼は人事戦略を考える人事企画のチームからのもので、担当者はこの結果を踏まえて企画を進めていきます。

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著者プロフィール

  • 鹿内 学(シカウチ マナブ)

    博士(理学)https://researchmap.jp/shika
    株式会社シンギュレイト代表。京都大学などの研究機関で10年ほど脳活動画像データ、生体データの計測・分析をおこなう基礎研究に従事。現在、働く中でのコミュニケーション・データから関係性に注目した次世代ピープルアナリティクスの事業化にとりくみ、働く組織の科学と実用をめざす。代表を務めるシンギュレイトでは1 on 1や会議で利用できる可視化ツールを提供中。情報量規準が好き、サッカー好き、漫画好き。

  • 冨永 裕子(トミナガ ユウコ)

    IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタントとして活動中。ビジネスとテクノロジーのギャップを埋めることに関心があり、現在はマーケティングテクノロジーを含む新興領域にフォーカスしている。

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連載:1枚の図から見えてくるピープルアナリティクス
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2020/07/01 06:00 /article/detail/2215
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