エンジニアレジュメに関してのエピソードは前回をお読みください。
昨日、エンジニアの熊田さんから教えていただいたことをいち早く確認したくて、翌日は始発で会社に向かいました。会社に向かう電車の中では、念仏のようにこんなことをつぶやいていました。
「会社に着いたらFind Job! の管理画面を開いて、エントリーしてきてくれたエンジニアさんのレジュメを開いて、現在勤務している会社名を検索して業界を調べて、何を開発してきたのかを確認する。それができたら熊田さんのところに持って行って見てもらって……大丈夫、大丈夫。熊田さんが出社してくるまで後4時間はあるからきっとできる!」
エントリーしてきてくれたエンジニアさんが、どうかWeb系のエンジニアでアジャイル開発を経験していて……そしてウチと同じ広告の配信サービスを作っているエンジニアさんでありますように! と祈りながら渋谷駅から会社まで猛ダッシュしました。
夜が明けたばかりの薄暗いオフィスに到着すると、照明をつけるのも忘れて自分のデスクに向かい、PCを開いて、Find Job! からエントリーしてきてくれたエンジニアさんのレジュメを隅々まで見ていきました。
「年齢は28歳で、出身大学は……わっ、わっW大の理工! おぉ~! ちょっと待って、多分……神山さん(仮名)と同じ大学じゃなかったかな?」
私は従業員台帳から履歴書を引っ張り出して調べてみると、思ったとおり、エンジニア責任者である神山さんと同じ大学出身でした。次に現在就業中の会社を確認し、インターネットで検索してみました。
「XXX株式会社!うゎ~ウチよりも大きいIT企業だ! Web系のエンジニアさんであることは間違いない! インターネット広告事業もやっているから……このエンジニアさんのレジュメのどこかに“広告”について書いてないかな?」
レジュメに目を移し“広告”というワードを探したが見当たらない。もしかしたら広告系のエンジニアさんではないのかもしれない……。一瞬不安がよぎりましたが、あきらめずにレジュメに書いてあるプログラミング言語を全部検索してみようと思い直し、検索を続けました。
「PHPでの開発経験は5年以上あるからこの言語は問題ないよな。それ以外のプログラミング言語を調べて……」
“Hadoop”というワードを調べると、“広告のアクセスログ解析に使用される”という説明を見つけました。なるほどと思ったのと同時に、私の頭にあることがよぎりました。
「んっ? この“Hadoop”というワードどっかで見た気がする。どこで見たんだっけ……そうだ!」
“Hadoop”とタイトルにある本が熊田さんのデスクにあったのを思い出しました。熊田さんのデスクを見ると、やはりあります。そこであることに気づきました。
「そっか! エンジニアさんのレジュメをいくら見たって、知識の少ない私に理解できるはずがない。でも、熊田さんの職務経歴書と照らし合わせたらどうだろう。熊田さんと似たような経歴だったら、きっと書類選考は通過するはず!」
自分のデスクまで走って戻り、再び従業員台帳から熊田さんの職務経歴書を引っ張り出して、エントリーしてきてくれたエンジニアさんのレジュメと照らし合わせてみました。
「何がどうなんて説明しろって言われたら全然説明できないけど……なんかちょっと見えてきた! このエンジニアさんが開発で使っているプログラミング言語はほとんど熊田さんと一緒だ! だから、熊田さんの目からも、きっと通過するエンジニアさんだ!」
うゎ~やったー! と大声を上げながらそのレジュメを熊田さんに渡す準備をしていると、突然オフィスの明かりがつきました。誰か来たのかな? と思い、そっと明かりがついたほうへ向かうと、エンジニア責任者の神山さんがデスクに座っていました。
朝の8時に神山さんが出社していることに私は驚きました。
「神山さん、エンジニア責任者なのに始業時間の2時間前から出社しているんだ。責任者の人って始業時間ギリギリに来るものだと思っていたけど……神山さんは違う」
大事なサービスを支えるエンジニア責任者の神山さんの姿勢に感動しながら、ダメダメな私はもっと努力しなくちゃいけないなと感じました。
自分のデスクに戻って仕事をしていると、私の中で悪魔と天使が囁(ささや)きました。
「ちょっと待って! 今、神山さんと話せるチャンスじゃない?――でも、どうやって話し掛けたらいい? こんな朝っぱらから話し掛けに行ってスルーされたら立ち直れない……もしかしたら、神山さんはエンジニアさんの手が足りなくて朝早く出社されたのかもしれない!」
でも、目の前に印刷したエンジニアさんのレジュメを見つめながら、こう思いました。
「よしっ!大丈夫だ。エンジニア採用は、神山さんの中でも最重要案件なはずだから……今話し掛けてもきっと聞いてくれる。スルーされたとしても誰もいないし恥ずかしくない。完全アウェイでも突っ込め! 私」
大きく深呼吸をして、レジュメを持ち、神山さんが座っているデスクに向かいました。