岩本 英佑(いわもと えいすけ)氏
株式会社HRBrain セールスチーム エンタープライズユニット
大学卒業後、大手人材会社で人材紹介/採用コンサルティング業務に6年間従事。不動産/建設/物流/商社/広告/ITと幅広い業界を担当し営業部門のマネージャーとして組織開発も行う。現在はHRBrainのプレイングマネージャーとして人事/経営層に対しての活用提案、組織マネジメントも担当している。
事前に確認しておきたい4つのチェックポイント
個人の価値観の変化にともなう働き方の多様化や、テクノロジーの急速な進化による外部環境の変化、労働人口の減少により、新しい人を採用するのではなく、今いる人材をしっかりと育成&活用する方向で考える企業が増えている。
タレントマネジメントにおいては、組織内で活躍できた人だけが昇進できる「適者生存」から、個人の可能性を信じてリーダーを育成する「適者開発」の考え方にシフトすることが非常に重要だと岩本氏は指摘する。
では、この適者開発の思想で、効果的にタレントマネジメントを推進するには、どうすればよいのだろうか。岩本氏は、タレントマネジメントを始める前に押さえておきたい4つのチェックポイントを紹介した。
- 実施目的・方針のすり合わせができているか?
- 企業文化や人事制度を変えていく想定ができているか?
- 活用を前提としたデータの一元管理ができているか?
- 効率的なデータ収集・更新ができる状態か?
1. 実施目的・方針のすり合わせができているか?
タレントマネジメントは、あらかじめ解決したい課題を明確にしておき、人事・経営・現場(事業部)が共通の目線を持ちながら三位一体で取り組むことが重要だ。途中で個別の施策が目的にすり替わってしまわないよう、関係者間で連携を取りながら推進していきたい。人材開発会議という会議体をつくって、タレントマネジメントの実施目的や方針を共有しながら進めている企業もある。
2. 企業文化や人事制度を変えていく想定ができているか?
タレントマネジメントを進める上では、人事制度同士の関係を見ることが大切。たとえば評価制度を変えるなら、それに伴って教育制度や報酬制度、等級の見直しが必要となる。タレントマネジメントが単独で走ることのないよう、注意したい。その先には企業文化も変える必要が生じる可能性があることも忘れずに。
3. 活用を前提としたデータの一元管理ができていますか?
人事データの3大疾病として「ばらばら病」「ぐちゃぐちゃ病」「まちまち病」の3つが挙げられる。
- ばらばら病……社内にデータが散在して管理ができなくなっている状態。担当業務や部門ごとに管理システムが異なるために発生する。どこにデータがあるのかさえ分からないことも多い。
- ぐちゃぐちゃ病……データが手書きやPDFで管理されていたり、データの入力表記が統一されていなかったりすることで生じる。検索も分析もできない状態。
- まちまち病……過去から評価の基準や定義が変わる、途中で取り組みをやめてしまったなど、さまざまな理由によってデータの連続性が保たれていない状態。
こうした病にかからないようにするために、人事・経営・現場が、同じデータを可視化・分析・活用できる共通の人材プラットフォーム「HRBrain」があるという。HRBrainにデータを活用できる状態で人事情報を集約するのだ。HRBrainを導入した際のシステム構成は下図のとおり。
また、HRBrainは既存の人事基幹システムと連携して活用することもできる。その場合、事務作業は人事基幹システムで行い、データもそこに保管する。データ活用のみHRBrainで行うイメージだ。「このようなシステム構成で基幹システムとHRBrainを併用するのが標準となりつつある」(岩本氏)
4. 効率的なデータ収集・更新ができる状態か?
タレントマネジメントで活用するデータは、最新のアクティブな状態で見える化されていなければならない。そのためには、それぞれの人事項目で更新頻度を検討し、社内でルールを整備しながら、随時更新される仕組みを構築する必要がある。この仕組みづくりをおろそかにすると、せっかく一元管理できるようにしたとしても、活用できなくなってしまう。現場の協力が不可欠だ。