一人ひとりの個性に合わせて人事制度も「100人100通り」
企業における評価制度の重要性が、ますます高まってきている。とりわけIT業界では、技術者の慢性的不足や働き方の多様化が進み、自分の能力や成果への評価が妥当でないと思えば転職することも当たり前になりつつある。さらに、コロナ禍で定着したリモートワークという新しい環境下で、「会社も本人も納得のいく評価方法」を模索している人事担当者は少なくないだろう。
「サイボウズ Office」や「kintone」などのクラウドサービスで知られ、企業の情報共有や組織の業務効率化はお手のもののサイボウズも例外ではない。同社 人事本部 部長の青野誠氏は、「評価制度というのは、やはり非常に難しい。当社の評価制度も長年にわたり、さまざまな試行錯誤を経て現在に至っています」と明かす。
サイボウズの人事制度の基本方針は「100人100通りの人事制度」だと、青野氏は言う。
「普通、制度というと1つの規制や制約を与えるイメージですが、当社は逆で、一人ひとりの個性が違うんだから人事制度も100通りあればいいんじゃないか、と考えています。その背景には、サイボウズのPurpose『チームワークあふれる社会を創る』があり、中でも人事領域では『自立と議論』というCultureを非常に大切にしています。いうなれば、キャリアをどうしたいかは自分で選び取ろう(自立)、そして疑問があればどんどん質問して話し合おう(議論)というわけです」(青野氏)
いかにもサイボウズらしいユニークなコンセプトを、楠本氏は「個性はそれぞれ違うのが当たり前なのだから、一見公平に見える『全員同じ評価』は、むしろその個性を無視した評価につながりかねません。公平性よりも個性を重んじることで、一人ひとりの幸福や達成感を追求しようというほうが自然です」と高く評価する。