矢野経済研究所は、国内の人事・総務関連業務アウトソーシング市場を調査し、主要14分野サービスの動向、参入企業動向、将来展望について結果を発表した。
調査の概要は以下のとおり。
- 調査期間:2022年1月~3月
- 調査対象:人事・総務関連業務アウトソーシングサービスを提供する主要事業者など
- 調査方法:当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話・eメールによるヒアリング、および文献調査併用
- 発刊日:2022年3月28日
市場概況
2020年度の人事・総務関連業務のアウトソーシング市場規模(主要14分野計)は、前年度比0.5%減の9兆9037億円であった。内訳を見ると、シェアードサービス市場(シェアードサービスセンター、学校法人業務アウトソーシング)は前年度比4.7%減の5020億円、人事業務アウトソーシング市場(給与計算アウトソーシング、勤怠管理ASPサービス、企業向け研修サービス、採用アウトソーシング(RPO)、アセスメントツール)は同3.6%減の9133億円、そして総務業務アウトソーシング市場(従業員支援プログラム〈EAP〉、健診・健康支援サービス、福利厚生アウトソーシング、オフィス向け従業員サービス)は同2.8%減の2659億円であった。人材関連業務アウトソーシング市場(人材派遣、人材紹介、再就職支援)は同0.3%増の8兆2225億円で、全体の約8割を占めている。
2020年度は、新型コロナウイルス感染症拡大のマイナス影響、主には年度初めの4月に発出された外出制限が伴う緊急事態宣言により、経済活動が停滞した影響を通年度で受ける形となった。これにより、14市場中9市場がマイナス成長となり、プラス成長となった5市場においても軒並み成長率が縮小している。
2021年度でも、3回目、4回目の緊急事態宣言が発出されるなどコロナ禍の影響は継続しているものの、外出制限下での事業継続に向けた体制整備やノウハウの蓄積なども進展しており、14市場中13市場でプラス成長に転じる見通しとなっている。
提供サービスのワンストップ化、プラットフォーム化が加速
参入事業者側を取り巻く環境を見ると、業務効率の向上を目的に定型業務を切り出してシステム化を図る動きや、それに伴い組織体制の再構築、業務横断的なサービス領域の拡大、提供サービスのワンストップ化などへ向けた異業種事業者とのアライアンスなどの動きが、ほぼすべての市場で活発化していることが分かる。
また、単なる業務処理から高付加価値サービスの提供へシフトする流れが年を追うごとに加速しており、企業ニーズに沿ったサービスを提案したり、業務・組織改革を通じたビジネス変革を総合的に支援したりする業務コンサルティングやソリューションを提供する事業者も増加の方向にある。
特に、コロナ禍により一段とサービスニーズが高まっている、働き方改革やDX推進に関わる業務支援コンサルティングを手掛ける事業者が増加しており、アウトソーシングに求める企業ニーズの変化を受ける形で提供サービスのワンストップ化、プラットフォーム化が整備されるようになっている。
将来展望
人事・総務業務アウトソーシング業界が最も影響を受けるのは、ユーザー企業の業績を左右する景気動向であり、コロナ禍などにより景気に陰りが見られた2020年度は、ほとんどの市場でマイナス成長に転じている。しかし、働き方改革やDXを推進する企業が増える中で、マーケットの大きなマイナス要素となる景気減退の影響を上回る勢いでサービスニーズが顕在化している市場が多いのも事実であり、むしろコロナ禍がアウトソーシング需要を喚起している状況にあるともいえるという。
また、内製化を主体としてきた日系大手企業の外注化機運の高まりに加えて、すでにサービスを導入している企業のリピートや提供サービスの深耕、中堅・中小企業を中心としたアウトソーシングサービス未導入企業までサービス需要の裾野が拡大している。この流れを受けて、サービスの高付加価値化やワンストップ化などによる効率的な需要取り込みが進められており、マーケットのさらなる拡大が期待できる状況にあると、同社は述べている。
なかでも、中堅・中小企業のサービス需要に関しては、このクラスの企業がリーズナブルに利用できるクラウドサービスの登場に合わせる形で急速に顕在化しており、マーケットを活性化する役割を果たしている。この流れは、近年のアウトソーシング市場において、継続かつ広がっていく様相を呈している。
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