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人材マネジメントと人事データ活用 事例ファイル | #2(AD)

リモートワークで起こるコミュニケーション障害を防止し、最適な配属も支える理論とは

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 コロナ禍で働き方が変化したことで、今までどおりのコミュニケーション手法が通用せず、悩んでいる方は多いのではないでしょうか。今回お話を伺った株式会社シノプスも、そうした一社でした。コミュニケーションが制限され、お互いのことが分かりづらくなったという同社。その課題の解決策として全社に導入したのは、個人の考え方や行動の特性をデータ化して活用するある理論でした。その理論とは何か。全社導入を可能にした背景とは。データに基づく人事施策の取り組みについて、同社 取締役 管理部長 島井幸太郎氏に伺いました。

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診断結果と本人の印象・行動がマッチしたので全社導入

――自己紹介、会社の紹介をお願いします

 シノプスは、スーパーマーケットを中心とした流通業向けに需要予測・自動発注サービスを提供している会社です。「世界中の無駄を10%削減する」というビジョンを掲げ、在庫の問題をITで解決するという方針の下に運営しています。

 設立から36年が経ち、フードロス削減に関する実績が増加してきました。特に最近はSDGsやDXに注目が集まっており、引き合いが増えてきています。

 私は現在、取締役・管理部長としてコーポレート部門の責任者をしています。過去には上場準備の責任者(2018年上場)や新卒採用の立ち上げ、人事制度の改革などに携わってきており、最近は経営企画やIRに関することをメインとしています。

島井 幸太郎氏
島井 幸太郎(しまい こうたろう)氏
株式会社シノプス 取締役 管理部長
コーポレート部門の責任者。2010年入社。新卒採用の立ち上げや人事評価制度の構築など、人事を中心にコーポレート部門全般を担当。業務改革プロジェクトの推進者になることが多く、さまざまな社内システムを導入。株式上場前は上場準備責任者としてIPOを最短で実現し、上場後はIR・広報・経営企画・新卒採用・業務改革を主に担当。

――御社がFFS理論を取り入れるきっかけになった課題は何ですか。

 出社率が100%だった頃、弊社は大阪に60名、東京に10名ほどがワンフロアに集い、お互いの顔が見える状況で働いていました。2020年、急にリモートワークに切り替えたことにより雑談が減り、周囲の社員が何に困っているのか分からなくなってしまったんです。新しい働き方に合わせて、コミュニケーション手法を変えなければならないと感じたときに、ワークスエンターテイメント様からFFSのご提案いただいたことが、FFSを取り入れる一つのきっかけでした。

 雑談が減り、社内の雰囲気が見えなくなることで特に影響を受けたのは、コロナ禍で入社した新卒や中途社員です。社内にどのような人が全く分からないまま仕事を進める不安を感じ、また受け入れる側もどんなタイプの人が入社したか分からないのでうまくフォローもできません。

 今後もリモートワークを継続する方針であったため、各社員の性格や個性を見える化して、コミュニケーションの円滑化を図ろうと考えました。

――改めてFFS理論の概要や、特徴を教えてください。

 FFS(Five Factors & Stress)理論を簡単に説明すると、ストレス学をベースとして5つの因子で個性や強みを活かすための理論です[1]。FFS理論の存在は、『宇宙兄弟とFFS理論が教えてくれる あなたの知らないあなたの強み』という書籍で知りました。管理部の社員に試してみたところ、FFS診断の結果とその人の特徴が合っていると感じたため、全社で導入を決めました。

 FFS診断によると、私には「物事の白黒をつけたい」「前提条件を理解しないと次の話に進みたくない」という個性があります。加えて、好き嫌いはあまりない傾向のようです。たしかに、私は相手と話すときに「それはなぜ?」と前提条件を確認しながらコミュニケーションをとります。「なぜ?」と追求されながらコミュニケーションをされるのが苦手な人からすると、「私のことが嫌いなのかもしれない」とネガティブに受け取ってしまう可能性があります。

 とはいえ、私はただ純粋に物事の背景や前提条件を確認したいだけであり、相手のことが嫌いで「なぜ?」と質問をするわけではないんですね。コミュニケーション相手が、私のFFS結果を知っていれば、「島井さんはこういう特性だから、こんなコミュニケーション方法をとっているんだ」と理解することができ、お互いのストレスが軽減できます。

 また、FFSでは5因子による個性結果と合わせて、ストレス状態も数値として確認できます。ストレスの高低に加えて、人それぞれの「ストレス要因」も確認できるのが特徴です。私の場合は「義理人情や感情で判断しないといけない状況」にストレスを感じるという結果が出ています。さらに、「判断(割り切る)状態をつくる」のがストレス対処法と示されているので、自分自身のストレス解消法として参考にできるのです。

[1]: FFS理論では、個人の潜在的な強みが、ポジティブに発揮されているか、ネガティブに発揮されているかが分かるほか、人と人の関係性を客観的に把握・評価し、チームを最適な編成にできるという。(出典・詳細:株式会社ヒューマンロジック研究所「FFS理論について」)

全社導入がスムーズにいった理由と導入後のサポート

――FFSを社内に浸透させる流れや、行った施策について教えてください。

 まず、こういった診断に興味を持ちそうな課長に話を持ち掛け、とある部署にトライアルでFFSを受けてもらいました。トライアルした部署で社員が興味を持ったのを見てから、改めて課長会でコミュニケーション課題の問題提起をして、FFSの本格導入を進めました。

 導入の目的はコミュニケーションの円滑化です。リモートワーク時のコミュニケーション方法に悩んでいたり、新入社員の性格や個性がつかめず困っていたりする共通認識があったため、思いのほか導入はスムーズでしたね。最初は任意で案内していましたが、結果としてほぼ全員がFFS診断を受けてくれました。

――全社で受けた後、診断結果をどのように活用しましたか。

 一つは、自己理解のために診断結果の説明文を全社員分書いて1on1を促したこと。もう一つは、FFSを用いて自己理解・他社理解をより深めるためにワークショップを行ったことです。

 診断結果を集めた後、ただ数値データを渡して公開するだけでは活用しづらいと思ったので、それぞれの因子タイプや数値結果を見ながら、私が一人ひとりの特徴の説明文を書いてまとめました。説明文の提供に加えて、社内ポータルで1on1の申し込み窓口を設けて、自己理解を深めるフォローも実施しています。

 90人近くの説明文を書くのは大変でしたが、診断結果をどう読み取るかフォローをしたり、ワークを通して相互理解の補助をするのは重要だと考えました。結果的に、リモートワークで感じていたコミュニケーションの壁を取り払うことができたと思います。

 自己理解・他社理解の促進のために行ったワークショップとは、10名ほどのチームを作ってお互いの診断結果について、思い当たるエピソードを伝えあうものです。「私は●●因子の数値が高いのですが、これにまつわるエピソードはありませんか」という問いかけをして、話を共有することで相互理解を深めました。

新入社員の配属の検証に有望視

――新入社員の配属時にもFFSを活用したと聞きました。どのように活かしましたか。

 弊社では、新卒に対して入社後1ヵ月間、新入社員研修を実施しています。研修の後、新入社員が部課長の前で「私はこういう人物です」とアピールを行い、その後ドラフト会議にて配属を決める流れとなっていました。ドラフト会議では、新入社員のプレゼン内容や選考課程の結果、本人の希望を踏まえて、主に定性的な情報で配属を決めており、配属後は約1年間のOJTを行っていました。

 しかし、2022年度は新入社員が10名と増え、大阪・東京の2拠点に配属することの難易度が高まりました。リモートワーク環境において「配属部署とマッチするか」「OJTトレーナーと相性がいいか」は、非常に重要な要素となるため、今回から定量的なFFSデータを使ってみようという話に至ったのです。

――FFSを活用した配属を実施してみて、何か変化を感じていますか。

 FFSで配属決定したばかりなので、具体的な成果はまだ分からないものの、データを用いることで配属後の検証がしやすくなったと感じています。また、会議で話す内容も変わりました。

 今までの配属会議は定性的な話が多く、「営業部のソリューション2課と3課、どちらに配属する?」といった問いがあった際も、最後は勘に頼って決定していました。FFSデータを活用すれば、定量的なデータと定性的な情報を組み合わせて決めることができるので、会議の進め方も変化したと思います。

 また、データで配属決定をすることで、1~3ヵ月後に「この配属が合っていたか」と検証ができるようになります。配属の良し悪しに関して人事にアドバイスする際も、データありきで会話できるためフォローがしやすいです。

 もう少し時間が経ったら2022年度の配属について検証を行うとともに、3ヵ月に1度実施している診断や、労働時間データなどとも組み合わせて、配属の良し悪しを検証していきたいと考えています。

――FFSのような人事データを取り入れる際に難しかったことや失敗したことはありますか。

 今回活用したFFSデータは、結果はシンプルですが非常に奥深いものです。FFSデータに限らずですが、社内に最低でも1人は人事データに明るい社員を置かなければならないと感じました。私はFFSに関する資格を取得しましたが、データをしっかり理解し活用できる、最初の1人を作るのが大変だと思います。

 また、他社に聞くと、弊社のようにいきなり全員に診断を受けてもらうのも難しいようです。弊社で全社員がスムーズにFFS診断を受けられたのは、数年前から従業員アンケートでエンゲージメント調査を行っており、人事データを取ることが当たり前の文化があったためです。他にも、社内に性格診断好きな協力的な社員がいたことも大きいと思っています。

 このように、人事データを受け入れる基盤となる文化がなければ、なかなか導入は難しかったのかもしれませんね。

――今後、人事データ活用に対してチャレンジしたいことを教えてください。

 人事データを分析して、施策に落とし込める社員をもう1人増やしたいですね。もしくは私が他の業務を引き継ぎ、人事データに最優先に携われる環境を作ることも並行して検討していきたいです。それだけ、人事データや人に関するテーマは重要だと思っているためです。他の人に任せることも大事ですが、人事の優先順位をさらに高めていきたいと思います。

 また、先ほどもお伝えしたように、FFSデータ単体だけでなく、エンゲージメントサーベイや労働データなどと組み合わせて、より深い検証も実施していきたいと思っています。

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【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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https://hrzine.jp/article/detail/4040 2022/05/31 10:00

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