リモートワークによって変化したストレス要因
――新型コロナウイルスの感染拡大という外的要因によるストレスにさらされたことで、働き方に影響が出ている人たちは多いかと思います。御社では「ラフールサーベイ」にて収集されたデータをもとに、緊急事態宣言前後における従業員のストレス状況の変化について調査・分析をされていますが、その結果から見えてきたことを教えていただけますか。
そうですね。コロナ禍前後で不調者が増えているというのは、体感されている方も多いのではないかと思います。しかし、実際のデータで見ると、人数的にはそれほど大きくは増えていません。
むしろ、テレワークを実施している企業では、上司との関係が良好になってストレス状態が改善されたことが分かりました。対面で会話できないコミュニケーション不足を解消するために1on1の回数を増やすなど、コミュニケーション量を増やす取り組みに注力された企業が多かったからではないかと考えています。
――なるほど。それは興味深い結果ですね。
一方で、同僚同士で行われる横のコミュニケーションが不足していることによって、ストレス状態が悪化しているという結果も出ています。
以前は席の近い人に「これって、どうだったっけ?」と気軽に聞けたことが、離れているとつい確認するのを後回しにしてしまったり、「わざわざ確認するほどのことでもないかな」と遠慮してしまったりして、モヤモヤがたまっていくのだと思うんですね。
ですから、リモート下でもメンタルの不調を防いでパフォーマンスを上げたいと考えていらっしゃる企業には、「横のコミュニケーション不足の解消に向けた取り組みを大切にしたほうがよい」とお伝えしています。
――よく分かりました。他にも何か発見はありましたか。
今の時代、男女の区別をするのは望ましくないかもしれないのですが、我々の調査結果によると、男性に比べて女性のほうが将来のキャリアに対する漠然とした不安を感じて、精神的に疲弊されていることが分かりました。リモート下で1人になる時間が増えて、「私、このままでいいんだっけ?」と悩み始め、負のスパイラルに陥るケースが散見されます。
また、特にスタートアップでは、女性に業務の偏りが出やすいようで、「自分ばかりが大変な思いをしているのに、評価が見合っていない」と不満を募らせている方が多い。もともとコミュニケーションを取ることに長けていた女性が、リモート下でも自発的に動いたことで、業務が集中してしまっている可能性があります。
「女性の管理職比率を高めるために『管理職になりませんか?』と声をかけても断られてしまう」と悩んでいらっしゃる企業は、こうした働き方をする女性の気持ちに寄り添って、モヤモヤを解消するためのケアをより厚くしていく必要があるでしょうね。