起業するならHR領域でと決断。人事・採用の生産性向上に挑む
——当初、採用管理システム「HERP Hire」をどのような背景で開発・リリースされましたか。
僕はHERPを創業する前、デーティングサービスを提供するエウレカで人事・採用担当をしていました。ある意味、起業のための準備期間という位置付けでした。同社で1年ほど務めた後、いざ起業しようと思ったときに、何をしたら本気で取り組めるのかと考えてみました。
振り返ってみると、僕自身がそれまで手がけてきたのは採用でした。自分が当事者として課題感を抱けるのは、やはりHRの領域しかありません。ならば、HRビジネスにチャレンジしてみようと思ったんです。そしてせっかくなら、人事・採用担当者が本当に欲しいものをつくるべきだろうという想いが強かったですね。
それともう1つ、起業を後押しすることになったのは、エウレカの親会社でありNASDAQ上場企業であるMatch Groupのグループ全体での知見共有の場に参加させてもらった際に、親会社で使っているシステムや、HRとしての動き方について教えてもらい、日本とアメリカの差分を理解させてくれたことでした。世界の最先端と日本との差分を埋めていくのはとてもやりがいがあることですし、そこに取り組めば勝てるのではないかと考えました。それで2017年4月からHERP Hireの開発に着手しました。
——庄田さんの人事・採用担当としての経験と最先端のHRプラクティスとの出会いが結実し、HERP Hireの開発が始まったわけですね。
加えて「自動化」も意識していました。人事にはルーティンワークが多すぎるという課題も感じていたからです。HRの労働の質や生産性が上がらないのは、大半を事務作業が占めているからであり、そこから解放していきたいという想いもありました。
——HERP Hireの正式リリースは2019年です。2年間を開発期間に充てられたわけですか。
そうです。その期間にもいろいろあった気がします。まず1つは、より良いプロダクトをつくるために、会社の皆が採用実務に関する理解を深める必要がありました。何しろ、僕しか採用の経験がなかったですからね。もう1つは、当面会社を存続させていくための利益も上げなければいけませんでした。それで、エンジニア採用のコンサルティングや採用代行に専念した時期もありました。
それに、創業から半年間はATS(採用管理システム)をつくっていませんでした。ATSとしては後発でしたし、競合も乱立していました。そこでまずは既存のATSと共存するプロダクトをつくり、そのうえでATSを開発するという順番で行こうと考えました。ですので当初は、求人媒体から候補者情報を収集し、ATSと自動連携するためのAPIをつくっていたんです。
このアイデアは各ATSベンダーにとても興味を持ってもらえました。ただ話を聞くと、自動連携に対応するための開発にどのベンダーも「3ヵ月から半年はかかる」というじゃありませんか。それなら、開発能力の高いメンバーがそろっている僕らがATSをつくったほうが早いと思い、HERP Hireの開発にピボットしました。いま振り返ると、当時はある意味何もなかったので開発スピードが早いというか、すぐに取りかかれるということだったなと思います。