シスコシステムズ「“自分の声が会社に届く”という体験を」
まず初めに登壇したのが、シスコシステムズ合同会社 執行役員 人事本部長 宮川愛氏。冒頭で宮川氏は、働きがいのある会社は「働きやすさ」と「やりがい」の2軸を持つとした上で、シスコでは働きがいのある企業を目指し、3つの基本理念「トップダウンとボトムアップ双方向のアプローチ」「一人ひとりの役割と期待値を明確化」「最初から完璧を目指さない」を重視していると明かした。
そのシスコの人材戦略で根底をなすのが「People Deal」という考え方だ。会社が社員に対して機会や裁量を提供する一方、社員に対しては自律な働きを期待する。そのように会社と社員がそれぞれ果たすべき約束を明確化することで、互いの成長を最大化させ、イノベーションを実現していくのだ。
そんなシスコでは現在、「個人」と「チーム」に対しエンゲージメントサーベイを実施している。個人向けのサーベイは「Cisco Team Space」というツールを利用しており、その中の「Check-Ins」機能で同社は「前週の振り返り」「今週の優先すべき業務」「上司からどのようなサポートが必要か」の3つの項目に対して、毎週全社員に5~10分かけて記入してもらっている。
そのなかで特筆すべきなのが「前週の振り返り」である。設問は4つあり、1問目「あなたは先週、毎日自分の強みを発揮しましたか?」、2問目「あなたは先週大きな価値を発揮しましたか?」は5段階評価で選択。続いて、3問目「先週エネルギーを得た出来事は何か?」、4問目「先週やる気が削がれた出来事は何か?」に対しては記述式で回答していく。
「私たちが仕事でパフォーマンスを最大化させようと考えたときに、プライベートの部分は切り離して考える方がほとんどだと思います。しかし、人は感情の生き物。家庭で何かあったとき、仕事に100%の力を発揮できないと思うんです。このツールではそういったプライベートな感情を書き出すことで客観的に自分を見つめ直し、かつ上司と感情を共有できるようになっています」(宮川氏)
1on1ミーティングを導入している企業は少なくない。一般的に上司が「最近どうか」と近況を尋ねると、たいていの部下は「ぼちぼちです」と答えるのが通例だ。だが、そのコミュニケーションからは何も生まれない。「上司と一歩踏み込んだ会話をすることで信頼関係が構築できる」と強調する宮川氏。シスコのサーベイにはそこに狙いがあるようだ。
次に触れたのは、チーム向けのエンゲージメントサーベイ。シスコではOODAループ(ウーダループ)のフレームワークを活用。OODAループとは、Observe(観察)、Orient(状況判断)、意思決定(Decide)、Act(行動)の4つの頭文字から名付けられたもので、迅速に正しい意思決定を行う際に活用されるフレームワークである。
まずエンゲージメントサーベイを実施し、点数や記述部分から生きた声を集め、データ分析を行い、注力エリアを決定。それに対し会社がプロジェクトを勝手に進めるのではなく、社員の意見を会社の施策として反映させ、ボトムアップで施策を実行していく。ここで大事なのが、「自分の声が会社に届く」という体験を社員と共有すること。
「自分が出した意見がどんな形でも経営に直結しているという実感をくり返し与えることで、社員一人ひとりの中に当事者意識が芽生えてきます。それにより『自分が何かを言えば、会社は変わるかもしれない』という考えに至ることが大切。そのためにも組織として透明性を担保することが重要です」(宮川氏)