矢野経済研究所は、国内の企業向け研修サービス市場を調査し、マーケット動向のほか、コロナ禍がマーケットにもたらす影響評価やサービスニーズの変化などを踏まえた将来展望を発表した。
調査の概要は以下のとおり。
- 調査期間:2022年4月~7月
- 調査対象:企業向け研修サービスを展開している事業者
- 調査方法:同社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話・FAXなどによるアンケート調査、ならびに文献調査併用
- 発刊日:7月28日
調査の結果については、同社は以下のように述べている。
市場概況
2021年度の企業向け研修サービス市場規模は、事業者売上高ベースで前年度比8.1%増の5210億円と推計した。前年度は“集合研修が行えない”というコロナ禍によるダメージをフルに受けるかたちでマイナス成長に転じていたが、2021年度はオンラインによる研修実施体制の整備が進展、集合研修の代替策としての役割を果たすとともに、これまで研修サービスを受けたことがなかった潜在需要を引き出すことにも成功。その結果、マーケットは再びプラス成長を確保するに至った。
また、企業の積極的な新卒採用を背景に、近年のマーケットの成長ドライバーとなってきた新人研修に関しても、有効求人倍率の改善により、クラスルーム形式の研修ビジネス(公開プログラム・カスタマイズプログラム)の需要が再び拡大。マーケット拡大をけん引した。新人研修と同様に、若手・中堅社員や次世代リーダー層、中間管理職、経営幹部候補者を対象とした階層別研修も概ね好調に推移している。
注目トピック~人的資本経営への関心の高まりと合わせ教育投資意欲も高まる
2021年度の企業向け研修ビジネスの外部環境を巡っては、コロナワクチンの投与が開始されるなど、コロナ禍前の社会経済環境を取り戻すべく、コロナ禍の収束に向けた動きが加速した。企業向け研修サービスにおいても、前年度後半から本格化した研修のオンライン化が功を奏し、集合研修からの切り替えが進展するとともに新たなサービス需要の取り込みにもつながった。よって、前年度のマイナス成長からプラス成長への転換を果たしている。
2022年度に入ってからも、コロナ禍が完全に収束した状況までには至っておらず、研修事業へのマイナス影響も少なからず継続する方向にある。しかし、オンライン研修などのコロナ禍に対応したサービスにより今後もダメージを吸収していけると見ている研修事業者は多い。
また、企業の採用意欲や教育投資意欲は落ち込んではおらず、人的資本経営=人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで中長期的な企業価値向上につなげる経営を推進する国の動きや、その動きを受けてのパーパス経営=社会に与える企業の存在意義や価値を軸にした企業経営に取り組む企業が増えている。人材育成に対する投資意欲はむしろ高まる方向にある。
将来展望
2022年度に入り、4月からスタートする新人研修の実施タイミングに合わせて対面型の集合研修を再開する動きが活発化。オンラインを活用したコロナ禍対応型の研修スタイルとの相乗効果によりサービス需要の取り込みも高水準で推移していく方向にある。これらを踏まえ、2022年度の企業向け研修サービス市場(事業者売上高ベース)はコロナ禍前以上のマーケットサイズに拡大すると見て、前年度比2.1%増の5320億円と引き続きプラス成長を予測する。
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