緒方 祥子(おがた しょうこ)氏
株式会社YOUTRUST コミュニケーション室 室長
東京大学経済学部を卒業後、2013年株式会社リクルート住まいカンパニーに新卒入社。不動産メディアのソリューション営業を経て、2018年にGoogle Japanへ転職。広告営業や電子書籍・ニュースのパートナーシップ業務に携わる。2020年よりYOUTRUSTで副業を始め、翌年同社に1人目の広報PR担当として正社員入社。現在、コミュニケーション室長として、人事・広報領域を管掌。
楠 拓也(くすのき たくや)氏
株式会社PR Table アカウントエグゼクティブ
早稲田大学文化構想学部を卒業後、2015年にエン・ジャパン株式会社に新卒入社。IT領域の人材紹介営業として事業の立ち上げに参画し、マネジメントを経験後、人事部ヘ異動。自社の中途採用や新卒採用でのチームリーダーに従事した後、2020年にPR Tableに入社。talentbookのフィールドセールスとして、顧客への新規提案を経験。2021年10月より現職に異動し、既存顧客への提案・コンサルティング営業に従事。
水面下に隠れた「潜在層」の人々に注目しないと良い人材は獲得できない
少子高齢化による人材不足は、さらに深刻になっている。長引くコロナ禍で有効求人倍率は減少しているものの、優秀な人材の採用はむしろ難しさを増しているといえよう。とりわけDX・IT人材の獲得はシビアになっていると、YOUTRUST コミュニケーション室 室長の緒方祥子氏は指摘する。
「IT業界の技術系職種の採用倍率は約10倍と、過去最高です。まさに採用側にとっては苛烈な争いが続いていると言ってよいでしょう。人材市場の流動性が増す背景には採用のオンライン化がありますが、その結果、求職者側にとってもわざわざ面談に出向くことなく、『まあ、話を聞いてみようか』といった、心理的ハードルが下がっていることも大きいと思います」(緒方氏)
一方で、転職希望者そのものは年々増加しており、ついに800万人を超えた。にもかかわらず、転職の顕在層=積極的に表立って転職活動している人たちは、そうした転職希望者のわずか9.5%に過ぎないという。従来の日本の転職文化は「よし、転職するぞ!」と決意してからでないと、とかく動きにくい構造があった。在職中の転職活動も難しく、限られた情報媒体や時間を使って動かなくてはならない。そうした環境が、この転職希望者と顕在層の割合のアンバランスな数字に表れているといえるだろう。
「ところが、潜在層=良い条件があれば転職してみたいと思っている人は全体の6割もいます。つまり、顕在層と合わせると、候補者は一挙に約7倍まで増えるのです。そう考えると、採用担当者側からはすごく視野が広がってくるし、広げなければいけません。言うなれば、氷山のように水面下に隠れている巨大なボリュームに目を向けないと、これからの時代、良い人材は採用できないのです」(緒方氏)
また、20~40代のビジネスパーソンのおよそ85%は、企業と何らかの接点を持ちたいと考えていることも分かっている。今すぐ転職しなくても、そうした接点を持つことは自己のキャリアを考える上で良い材料になるし、将来的な不安の解消にもつながるからだ。
「そうした方々は、今より良い条件があれば積極的に転職を検討し始めます。今のうちからキャリアに関する情報交換を重ね、いよいよその時が来たら、まず一番に自分たちの会社を思い出していただけるよう、中長期にわたるコミュニケーションを元にした『下準備』が大変重要になります」(緒方氏)