パーソル総合研究所は、職場のハラスメントに関する調査を実施し、その結果を発表した。
調査の概要と結果は以下のとおり。
2021年の年間における、ハラスメントを理由とした離職者数を簡易推計した結果は、約86.5万人
同調査の結果とオープンデータを基に、2021年の1年間において、ハラスメントを理由に離職した人を簡易推計したところ、約86.5万人であった。そのうち、57.3万人が退職理由としてハラスメントがあったことを会社に伝えられておらず、会社が把握できていない(暗数化している)。業種別に見ると、「宿泊業・飲食サービス業」でハラスメントを理由とした離職者が多い。
全就業者の34.6%が、職場で過去にハラスメントを受けた経験あり
調査対象者である全就業者に対し、過去にハラスメントを受けた経験があるかを聞くと、34.6%が「ある」と回答した。また、過去5年以内にハラスメントの被害を経験した3000人に対し、被害の実態について聞いたところ、「自分の仕事について批判されたり、言葉で攻撃される」(65.1%)が最も多かった。2位以下は、「乱暴な言葉遣いで命令・𠮟責される」(60.8%)、「小さな失敗やミスに対して、必要以上に厳しく罰せられる」(58.8%)が続いた。
被害者が認識したハラスメントに対して、会社側の対応まで至った割合は17.6%、82.4%のハラスメントは未対応のまま
被害者が受けたと認識したハラスメントに対して、会社側が何らかの対応をするまでに至った割合は17.6%であり、82.4%のハラスメントは未対応となっている。会社側の対応に至った場合の具体的な対応内容を見ると、「被害者の要望を聞いたり、相談にのってくれた」(40.8%)や、「被害者に事実確認のためのヒアリングを行った」(40.2%)、「加害者に事実確認を行った」(38.1%)などの割合が高い。
ハラスメントに対する被害者自身の対応について、「特に何もしなかった」が4分の1を占める
ハラスメントに対する被害者自身の対応については、「特に何もしなかった」が4分の1を占めた。また、周囲の人がハラスメントを目撃した後の対応としても、「特に何もしなかった」(=傍観行動をとる)人が最も多く41.4%、次いで「被害者の相談にのった/声をかけた」が40.7%となっている。
「会議で誰が提案者かによって通り方が異なる」などの属人思考の風土が強い組織にハラスメントは発生しやすい
「会議やミーティングでは、同じ案でも、誰が提案者かによってその案の通り方が異なることがある」「トラブルが生じた場合、『原因が何か』よりも『誰の責任か』を優先する雰囲気がある」といったような属人思考の風土が強い組織では、ハラスメントが発生しやすい。また、会社の対応率は低く、被害者が「相談しても無駄だろう」と予期する相談無力感も高い。
上司は、ハラスメント回避的なマネジメントをしている傾向が極めて高い
上司のマネジメントとハラスメントの関係を見ると、上司の多くは「飲み会やランチに誘わないようにしている」(75.3%)や「ミスをしてもあまり厳しく叱咤しない」(81.7%)など、ハラスメントを回避するような行動を多くとっている。
一方、こうした上司の行動は、部下に上司との心理的な距離感を感じさせ、上司との距離感を感じている部下ほど、過去1年間の成長実感を得られていない。
【関連記事】
・全国のパワハラ実態を調査、66.6%がパワハラを「受けたことがある」―ワークポート
・就活セクハラ・セカンドハラスメント防止のため法改正を求め厚労省に署名提出―日本ハラスメント協会
・職場のジェンダーハラスメントの多くは無自覚の可能性―ワークポートの調査結果