福留 進一(ふくどめ しんいち)氏
株式会社現場サポート 代表取締役社長
1990年大学を卒業後、鹿児島ゼロックス(株)に営業職として入社。2005年新規事業撤退方針を受け、同社を退職と同時に(株)現場サポートを設立。2019年鹿児島県経営品質賞知事賞・2020年日本でいちばん大切にしたい会社大賞・2022年版日本における「働きがいのある会社」ランキング ベスト100(小企業部門2位)など受賞。(一社)施工管理ソフトウェア産業協会 理事・鹿児島県中小企業家同友会 副代表理事・鹿児島県経営品質協議会 幹事等も務める。
離職率27%を改善するはじめの一歩とは
──貴社では「若手の働きがい」をどのように捉えていますか。
事業を行う上で、「社員の働きがいをどうやって高めるか」は考えていません。今までやってきたことが結果的に働きがいにつながっていたのだと、振り返りの際に気づくことが多いです。
働きがいとは何か考えてから取り組むというよりも、働きがいはなくてはならないものだと思っています。サービスを企画するのも販売するのも、全てが人であり、「会社の財産=人」と考えているからこそ、働きがいがなくては事業は成り立たないと思います。
──GPTWの「働きがい=働きやすさ+やりがい」を満たすために、どのような施策を行いましたか。
実は、創業4年目の2009年頃は、離職率が27%と非常に厳しい状況でした。この状況を変えるため、2009年に経営理念を作り浸透させて、人材の定着を図りました。すると、業績も徐々に高まっていきました。
働きがいのための取り組みの中で最も注力したのは、日本生産性本部が行っている「日本経営品質賞」のアセスメントです。このアセスメントにある組織能力という項目を機能させ、高めることが働きがいにつながると考えたのです。
ちなみに、当初から働きがいというキーワードを意識していたわけではありません。働きがいという言葉が広がる前に、働き方改革が世間から注目され、様々な施策を講じる中で働きがいという言葉を認知していきました。
離職率が高い状況を変えようと思ったのは、シンプルに、大事な人が辞めていくのが残念だと感じたためです。せっかく縁があって入社してくれたのに、一緒に夢が描けず退職されてしまうのは残念なことです。厳しい環境についてこられない人は辞めても仕方ないという思いも少なからずありましたが、突き詰めて考えれば、一緒に夢を描けなかった会社が悪いはずです。できない人は辞めても仕方がないという考えは、経営者として逃げだと思うようになりました。
弊社では、「感謝と承認」という言葉をよく使います。極論ですが、仕事ができない人も受け入れなければならないという考え方が承認です。とはいえ、できない人は全てのことができないわけではありません。一人ひとりの特徴や得意を活かしていけばよいのです。
──アセスメントは会社全体に実施されたのでしょうか。
(日本経営品質賞)アセスメント基準書に基づき、経営幹部で経営アセスメントを行いました。リーダーシップの状態、戦略の立案・展開、組織能力、CSRなどの項目を全体と照らして、できていることとできていないことを整理しました。特に組織能力は、組織と個人の2つに分けて、フレームに基づいてしっかり現状分析を行っています。
──働きがいのある環境を作る際、アセスメント以外に効果を感じた施策はありますか。
利益が出ない苦しい時期に、教育投資としてプロスポーツ選手などが受けているメンタルトレーニング研修を半年間、500万円ほどかけて実施しました。この教育投資でかなり成果が出たと思います。また、同時期に木鶏クラブという致知出版社の月刊誌『致知』を使った勉強会を開始し、10年以上続けています。勉強会の目的は、仕事への取り組み方や考え方を身に付けることです。以前の研修はテクニカルスキルのみでしたが、ヒューマンスキル、コンセプチュアルスキルなど幅広く行うようになってから、組織や社長の私自身が変わったと感じています。