指標は「3つのレイヤー」に分けて設定する
KPIマネジメントとは「目標達成に向け、無駄なく人や組織を動かすために、集中すべき点を明確に示すこと」です。それゆえに、多すぎるKPIや、追う価値のないKPIによって真に必要な取り組みに十分な時間を割けない状況は本末転倒といえるでしょう。それはHR領域におけるKPIマネジメント[1]でも全く同じことがいえます。
注
[1]: KPIマネジメントというアプローチは、マーケティングの世界で生まれました。
そもそも、KPIには次に示す「3つのレイヤー」があります。ご存じの方も多いかもしれませんが、人的資本開示のガイドラインとして使われることの多いISO30414内で示される指標の例などを見ても、これらのレイヤーがやや混同気味ですので、念のため確認しておきます。
- ①成果指標(KGI:Key Goal Indicator)
- 当該活動の、最終的な成果を測るための指標。
- ②中間指標(KRI:Key Result Indicator)
- KGIにつながる「トリガー」となる取り組みの進捗を測るための指標。
- ③活動指標(KAI:Key Action Indicator)
- KRIにつながる、重要なアクションの進捗を測るための指標。
人的資本経営で唱えられている「指標の開示」の本質は、「年度における取り組みについて、何らかのスコアをとにかく出して状況を示す」ことではなく、「指標によって成果を管理し、取り組みの練度を高めていくためのPDCAサイクルを回す」ことにあります。このPDCAサイクルは「成果指標」だけでは回りません。マーケティングでいえば、成果指標である「売上高」を見ているだけでは改善箇所が分からないのと同じです。
「活動指標」だけでも、その活動が本当に「成果」につながっているか分からず、PDCAサイクルは回りません。また、成果指標で示すものと、その実現に向けて設定した活動指標に距離がありすぎて(例:成果指標「エンゲージメント指数」→活動指標「社員向け啓発イベントの実施回数」)、それらがどうつながるのかイメージできないという場合もあります。
そのため、「中間指標」を挟むことは必須となります。さもなくば、成果指標までに情報が入りすぎて、本当に活動指標が成果に貢献しているのか分からなくなります。これもPDCAサイクルが回らない状態です。
つまり、正しいKPIマネジメントでは、3つのレイヤーの指標があり、それらが正しくつながる構造をつくることが求められるということです。次ページからはレイヤーごとに、HR-KPI設定のポイントを解説していきます。