パーソル総合研究所は、「男性育休に関する定量調査」を実施した。同調査は、次の3項目を定量的に明らかにすることにより、企業における男性育休推進の検討に資することを目的に実施された。
- 企業が男性の育休取得を促進することにメリットはあるのか
- どうすれば男性の育休取得率が上がるのか
- 男性が中長期で育休を取得するためには何が必要なのか
男性育休の取得率と期間の割合は比例しない
- 男性の育休取得率ごとに1ヵ月以上の中長期取得者がいる企業の割合をみると、取得率が20~50%の企業が60.6%で最多となる。一方で取得率80%以上の企業であっても、1ヵ月以上の取得者がいる割合は4割未満となり、取得率が高くとも、中長期の取得はできていないことが分かる。
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男性の育休に関する施策の実施状況を見ると、取得率5%未満の企業では、男性育休に関する「全社方針の発信」や「対象者への取得勧奨」の実施率が低い。
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男性育休を推進するうえでの企業の課題は、「仕事の穴埋め方法」「取得者が出た職場の負担増大」「仕事をカバーした社員の評価・処遇」といった不在時の対応が上位。女性の育休と比べると、男性の育休は、取得事例や取得希望者の少なさ、周囲のメンバーの理解不足が課題である。
短時間での成果創出のプレッシャーなどが育休取得にネガティブに影響
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男性が育休をとるうえで懸念している項目の上位は、「同僚への迷惑」「育休中の収入の減少」「仕事能力やポジション」といった中長期的キャリアへの影響が占めた。男女の差が大きい項目をみると、男性は自社の制度の有無や上司・顧客のことを気にしていることが分かる。
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本人が感じている育休のとりやすさと同様に、部下や同僚に育休を「とってほしい」と考える上司・同僚は、期間が長くなるほど少なくなる。
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男性が感じている中長期の育休のとりやすさに影響する組織要因をみると、男性が優遇されていること、短時間での成果創出のプレッシャーがかかる職場であること、定期異動が多いことが中長期の育休取得にネガティブに影響している。
育休によるポジティブな影響はさまざま
- 1ヵ月以上の取得者がいる企業は、1ヵ月未満の取得者のみの企業よりも「従業員の自主的な行動促進」「業務の見直しや属人化解消」「従業員の視野拡大」の効果を実感している割合が10ポイント以上高い。
- 取得率が5%になるまでは、1ヵ月以上の取得者がいなくても取得率が上がるほど効果 [1]が上がる。一方で、取得率が5%から80%の企業では、1ヵ月以上の取得者がいると効果を感じている割合が高い。
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育休取得による本人の変化実感を見ると、中期(2週間以上3ヵ月未満)の育休を取得した男性は、「モチベーションや継続就業意向の向上」「業務の見直しや属人化解消」につながったと感じている割合が高い。
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育休を取得した男性の3~5割が「ヘルプシーキング力」「多様な人材への理解力」「関係調整力」「ネットワーク構築力」といった対人力や、「時間管理力」「タスク管理力」「俯瞰力」「不確実性への対応力」といったタスク力の向上を実感している。とくに中期(2週間以上3ヵ月未満)の育休を取得した男性で向上実感が高い。これらの対人力やタスク力の高さといったビジネススキルはジョブ・パフォーマンスや周囲支援行動、職場改善提案行動といった組織貢献にプラスに影響している。
- 対人力やタスク力の向上には、育休中の「生活環境構築」「職場とのコミュニケーション」「自己学習」「復職後の両立体制検討」といった過ごし方がプラスに影響している。しかし、取得期間が2週間未満の育休ではそれらの実施率が低い。
調査の詳細はこちら。
なお、調査の概要は次図のとおり。
注
[1]: 次の12項目の効果を集計した。「法的要請への対応」「女性活躍推進」「従業員のモチベーション向上」「企業イメージの向上」「多様な人材についての理解促進」「優秀な人材の定着(離職率の低下)」「優秀な人材の確保(採用活動)」「従業員の時間意識(生産性)の向上」「従業員の視野拡大」「業務の見直しや属人化解消」「従業員の自主的な行動促進(周囲支援、アイデアの発案など)」「従業員の人材育成力の向上」
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