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人事労務事件簿 | #39

セクハラに関する相談窓口の対応が不適切と判断(横浜地裁 平成16年7月8日)

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 受けた本人に著しい精神的苦痛を与えるセクシュアルハラスメント。ハラスメントについては相談を受け付ける窓口の設置が義務化されるなど、取り巻く環境も改善されつつあります。しかし、相談を受け付ける窓口の担当者がまともに話を聞かなかったり、対応を怠ったりしたらどうでしょう。今回紹介する事案は、市役所内でまさにそうしたことが起き、訴訟に至ったものです。そもそも窓口担当者がハラスメントについて正しい知識・認識を持っているか、確認する必要があるかもしれません。

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1. 事件の概要

 本件は、被告(以下「Y市」)の公務員である原告(以下「X」)が、上司の係長からセクシュアルハラスメント(以下「セクハラ」)をされたうえ、Xの苦情申出に対する担当者である職員課長や市長の対応に義務違反があり、重大な精神的損害を被ったと主張したものです。

 Xは、Y市に対し、国家賠償法1条1項の規定に基づき損害賠償等を請求しました。

(1)当事者

 Xは、平成13年4月に常勤職員としてY市に採用され、総務部行政管理課文書法制係(以下「文書法制係」)に配属されました。

 AはY市の職員であり、XがY市に採用された当時は文書法制係の係長と主幹を兼務する職にあった者です(以下「A係長」)。職場の関係では、A係長がXの直属の上司でした。

 Bは、Y市の職員であり、XがY市に採用された当時は総務部職員課長の職にあった者です(以下「B職員課長」)。

(2)セクハラに対するY市の対応と相談窓口

 Y市は「職場におけるセクハラに関する基本方針」(以下「本件基本方針」)および「職場におけるセクハラの防止等に関する要綱」(以下「本件要綱」)を策定し、セクハラに関する相談や苦情を受け付ける相談窓口および相談担当者を設置していました。

 B職員課長は、平成13年10月当時、その相談窓口の責任者として本件基本方針や本件要綱の定めに従い、職員の相談や苦情申出に対応すべき職務上の義務を負っていました。

(3)歓送迎会等

 平成13年4月頃に同係内での歓送迎会が行われ、7月頃には同係内で暑気払いが行われました。

 C担当課長は、同年9月1日(土曜日)の午後4時頃から9時過ぎまでの間、自宅に係員全員およびその家族を招いて本件バーベキューを催しました。

 10月18日には、業務終了後に飲食店で係内の懇親会が行われました。

 10月24日には、県の文書部会終了後に中華料理店で懇親会が行われました。

(4)セクハラ被害の申し立ておよび内容

 Xは、10月29日にセクハラの苦情に関する相談担当者であるD市民課長に、A係長によるセクハラの被害事実を申し出ました。

 併せて、その背景となっている職場での性差別(お茶くみや雑用を女性職員だけにさせるなどのこと)についても改善を求めました。

 X作成の書面には、次の内容が記載されていました。

  • 懇親会や暑気払い等のたびに、XはA係長から「結婚しろ」「子供を産め」「結婚しなくてもいいから子供を産め」というような言動を繰り返された
  • 9月1日の本件バーベキューの際にA係長がXに、上記のような言動を繰り返した後、記念撮影時に自分の膝の間に座るように指示し、Xの腕をつかんで座らせ抱え込んで「不倫しよう」と言った。さらに、その後写真を撮影しているXに向かって「色っぽいよ」と発言した
  • 10月18日の係員懇親会の席で、A係長が「言葉のセクハラだけで体のセクハラがないのは、自分に魅力がないからか我々に理性があるからか考えろ」と発言した
  • 10月24日の県央都市文書管理研究会懇親会において、A係長が他市の男性職員に独身かどうか聞いた後、「うちにいいのがいるから」と発言した

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この記事の著者

坂本 直紀(サカモト ナオキ)

人事コンサルタント、特定社会保険労務士、中小企業診断士、坂本直紀社会保険労務士代表社員。就業規則作成・改訂、賃金制度構築、メンタルヘルス・ハラスメント対策社内研修などを実施し、会社および社員の活力と安心のサポートを理念として、コンサルティングを行う。 ホームページに多数の人事労務管理に関する情報、規定例、...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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