まず求職者の話を聞くことから始める
――IT業界は著しい人材不足に見舞われています。御社は企業に人材を供給する立場として、この状況をどのようにお考えですか。
労働人口が減っていくなか、IT人材へのニーズはどんどん増しています。そのため、IT人材の需給バランスが大きく崩れ、求人数が求職数を大きく上回っている状況です。そういった状況において、企業に派遣できる人材を増やすには、求職者が100%満足できるように、より踏み込んだ対応をしていかなければならないと考えています。
――企業はどのような人材を求めているのでしょうか。
やはり経験者です。スキルや経験がある人は希望の職種に就き、そこで十分に力を発揮できるでしょう。しかし、需給バランスが大きく崩れている現状では、経験者数の増加が需要の伸びに追いついていません。そのため、いかに未経験者に活躍してもらえるようにするかを考えていく必要があります。
――企業からの要望が多いスキルとは、具体的にはどのようなものでしょうか。
基本的にはプログラミング言語やソフトウェアなど、現場に必要なスキルです。ただ、大規模プロジェクトなどで育成を視野に入れている場合では、技術的な面よりもヒューマンスキルが高い人が求められる場合があります。逆に、案件によってはとにかくスキルが最優先という場合もあります。企業の要望は実にさまざまです。
――御社としても、派遣スタッフのスキルアップ支援を何か行っているのですか。
技術研修やキャリアアップに関するセミナーなどを定期的に開催しています。たとえば、Excel VBAやRubyなどの研修に多くの応募がありました。サポートデスクやヘルプデスク、あるいはWeb系の仕事に就いている人が、エンジニアとしてもう一段階キャリアを高められるような技術研修が人気です。
そのほか、キャリアを考えるイベントも行っていて、求職者が「自分にとっての優先順位」を明確にする手助けも行っています。たとえば、IT系に進みたいが、未経験で、自分に何が向いているかわからないというのであれば、ITエンジニアという選択肢を提案し、IT業界で働いた場合はどうなるかを示します。求職者と密にコミュニケーションを持ち、求職者の悩みを解決できるようにさまざまな可能性を示していく。個人の事情に合わせて選択肢や可能性を考え、情報を提供し、求職者が選択した結果に弊社が伴走するというイメージですね。
弊社も以前は、求人がなければ求職者に仕事を届けられないため、企業側の状況を理解することに注力しがちでした。それも一理あるのですが、今は、派遣スタッフから希望を聞き出し、どのような提案ができるかを考えていかなければならないと考えています。人材の需給バランスが崩れている状況では、個人の価値観に企業がうまくアジャストしていかなければ、求人と求職のギャップは埋まらないでしょう。