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人事労務事件簿 | #50

セクハラ・パワハラへの不適切な対応で抑うつ状態に 会社側の責任を認定(札幌地裁 令和3年6月23日)

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 セクハラ・パワハラなどを強く禁じ、対応マニュアルや相談窓口を設けている企業は少なくないでしょう。しかし、それでもセクハラ・パワハラを完全になくすことはできません。問題なのは、いざそれらが発生したときの会社の対応が不適切で、被害者を追い込んだりするケースです。今回紹介する事案は、まさにそのような対応で抑うつ状態になった被害者が、会社に損害賠償等を求めたものです。

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1. 事件の概要

 本件は、被告会社(以下「Y社」)のB支店長であった原告(以下「X」)が、同社取締役である被告丙川(以下「Z」)からセクハラおよびパワハラを受けたこと、ならびにY社がZによる各ハラスメントを把握した後もXに対する適切な支援をしなかったことが原因で、抑うつ状態になったなどと主張して、損害賠償等を求めた事案です。

 さまざまな争点の中から、Zのハラスメント、Y社の使用者責任の判断について取り上げます。

(1)当事者等

 Y社は、人材派遣、人材紹介、アウトソーシング、再就職支援事業などの株式会社です。

 X(旧姓「丁原」)は昭和53年生まれの女性で、平成28年7月ごろ、当時のY社B支店長の退職に伴い、同支店の支店長代理となり、平成29年1月以降はB支店長に就任して、人材派遣業等に係る同支店の業務全般を統括していました。

 Zは、平成28年からY社の取締役、翌年にはY社の専務取締役に就任し、Xが支店長代理業務を行うようになって以降、Xの直属の上司でした。

(2)セクハラ行為

<平成28年11月9日>

 Xは東京都内にあるY社の本社に出張し、研修後の打ち上げに参加しました。

 2次会でZはXの隣に座り、「ホテルに行っていいか」「抱いちゃおうかな」などと言いましたが、Xは関係悪化を怖れ、はっきり拒否しませんでした。

 2次会終了後、Zは午前2時42分~50分に「ホテルに行きたい」などのメッセージを送り、返信がないXに応答を求め、午前3時すぎには電話もしました。

 Xはこれを見て「気持ち悪い」と感じ、不安になりました。

<同年11月24日、25日>

 B支店とK支店の合同支店会議後に飲み会が開催され、X、Zは2次会(カラオケ)にも参加しました。

 このときZは、Xの右隣に座り、突然テーブルの下に置いていたXの右手甲の上に自身の左手を重ねるような形で、Xの右手を握りました。

 Xは、突然のZの行動に「気持ち悪い」という思いや恐ろしさを感じましたが、関係性の悪化やその場の雰囲気を壊してしまうことを怖れて、Zの手を払ったり、明確な拒否反応はせず、席を立ちZの隣から離れるにとどめました。

 Zは、この日の午前3時すぎに、Xに何の前触れもなく、「丁ちゃん」(注:Xの旧姓「丁原」を意味)とのメッセージを送信しました。

<同年12月13日>

 C取締役と出張し、Zの旧友L氏とXを交えた4名で会食後、カラオケで2次会を行い、X、Z、C取締役の3名が参加しました。

 C取締役が席を外した際、ZはXに抱き着き、キスや胸を触りました。

 Xが抵抗すると、ZはC取締役が戻るタイミングで離れました。

 Xは強い恐怖感を抱きましたが、Zが平然と振る舞い、関係悪化を恐れてその場を離れられませんでした。

 後日、Xは自分の部下のM、H、Nに相談し、Zから飲食に誘われても2人きりにならないよう、Nらに同行を頼みました。

(3)パワハラ行為

<平成29年5月以降の出来事>

 B支店の営業担当Hは、Xから体臭や業務の指摘を受け、平成29年5月ごろにZに相談しました。

 その際、Hは「XがZからセクハラを受けていると言っている」と伝えました。

 Y社の人事考課は賞与や昇給に大きく影響し、「1」の評価はこれまで誰にもついていませんでした。Xは6月1日、初めて人事考課表を作成し、部下HとOに「1」をつけてZにメールを送信しましたが、Xはこれまで評価基準の指導は受けていませんでした。

 Zは、同月5日、B支店での業務のためにB支店を訪れました。Xは、空港までZを車で迎えに行き、仕事先まで送り届けました。

 その車内において、Zから、「人事考課で1をつけるなんてあり得ない」「1を付けた管理者なんて今まで見たことがない」「会長にどうやって説明をするんだ」「支店長としての業務をできているというふうには評価できない」などと強い叱責を受けました。

 Xは、「1」という評価をつけたこと自体が間違っているとは考えなかったものの、Zからの叱責および再提出の指示を受けて、「1」をつけた項目を修正した人事考課表を作成し直し、改めてZに提出しました。

 同月6日、B支店で支店会議が開かれ、Xを含めたB支店の従業員3~4名とZが出席しました。

 同日の会議では、Zが、Xに対し、「支店長としてどう思っているのか」「支店長として本当に考えているのか」などと支店長としての資質を疑うかのような叱責を繰り返しました。

 その後、Hが「XがZからセクハラを受けている」と伝えたことを知ったXは、Zの態度が報復ではないかと恐れました。

 7月11日、K支店との合同会議で、ZはXの資料ミスを指摘し続け、「こんなマネジメントは聞いたことがない」と批判しました。

 Nの売上目標未達についても「Nの責任ではない」とし、K支店長を評価しました。

 Xは自分の資質が疑われていると感じましたが、翌日Zに説明し、Zは納得しましたが、「自分が一番正しいと思っている」「真面目すぎるし、重い」と発言しました。

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この記事の著者

坂本 直紀(サカモト ナオキ)

人事コンサルタント、特定社会保険労務士、中小企業診断士、坂本直紀社会保険労務士代表社員。就業規則作成・改訂、賃金制度構築、メンタルヘルス・ハラスメント対策社内研修などを実施し、会社および社員の活力と安心のサポートを理念として、コンサルティングを行う。 ホームページに多数の人事労務管理に関する情報、規定例、...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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