中途文化が続いたDMM 新卒採用を始めた理由とは
——貴社では、最近の学生の価値観や新卒採用の難易度の変化をどのように感じていますか。
DMMの新卒採用は、エンジニア・ビジネス職ともに2015年にスタートしました。ながらく中途文化が続いていた当社でしたが、組織の核となる人材を新卒から育てたいという狙いで始めたと聞いています。
当時と比べると、近年は学生にとって「売り手市場」です。学生は、より自身の成長や会社とのエンゲージメントを重視し、入社後のイメージを解像度高く描ける会社を選ぶ傾向があると思います。
ですので、企業にとっては難易度が上がり、「選ぶ」より「選ばれる」採用活動になっているといえます。特にエンジニア採用の場合は、10社以上から内定をもらっている学生もいます。
多くの会社と比較される中で、学生個人のニーズを探り、自社がどんな価値を提供できるのかを、的確に伝えることの難しさを感じていますね。
「学生ファースト」なインターンシップを実施
——その難しさを乗り越えるための施策の1つが、貴社が実施しているエンジニア向けインターンシップだと思います。どういったプログラムなのか、特徴や狙いを教えてください。
当社のエンジニア向けインターンシップは、3つのタイプ(就業型、ギルド型、短期型)に分かれています。全体として、「学生の成長を促すこと」「会社を知ってもらうこと」の2軸が大きな目的です。
「就業型」インターンシップでは、社内の1つのチームに所属して正社員と同じようにタスクを行ってもらいます。現場やプロダクトへの理解を深めつつ、技術面でも成長してもらう狙いがあります。開催期間は6~12月。この半年の中で、参加する時期や期間を学生の都合でカスタマイズできるのが特徴です。柔軟にスケジュールを調整できることで、他社のインターンシップや学業と両立しやすくしています。
また、「ギルド型」インターンシップも、実務を行ってもらいます。こちらは課題解決型のプログラムで、1チームに所属するのではなく、さまざまな事業部から集められた多様なタスクに取り組んでもらう点が就業型との違いです。たとえば、フロントエンドを志望している学生でも、バックエンドの技術に触れられます。多くの開発組織を持つDMMだからこそできる、「いろいろな事業・技術に触れたい」という学生のニーズを満たすプログラムです。
ギルド型では、タスクごとにポイントがついており、タスクをクリアして最も多くポイントを貯めた学生は「上位ランカー」として表彰されます。ゲーミングの要素を入れて、学生の力試しの機会となっているのも特徴です。
上述の2つとは異なり、「短期型」のインターンシップは、実務ではなく技術を5日間で学ぶ研修です。DMMのエンジニアの技術研修をベースに、まだ経験したことのない技術にチャレンジしたい学生や、就業型やギルド型を受けるほどのスキルに自信がない学生向けに、サーバーサイド、Android、インフラの3つのコースを提供しています。
——参加時期のカスタマイズや経験できる実務・技術などで、学生の多様なニーズを満たしているのですね。
学生に選んでもらうためには、やはり「学生ファースト」である必要があります。企業によっては、何百コースもインターンシップを用意しているところもありますが、当社はそこまでの数はありません。そのような中で、当社を希望する学生にはできる限り参加してもらえるように、2年前から参加時期のカスタマイズを始めました。これによって参加する学生の数は170%ほど増加し、今年は30名ほどが就業型に参加しました。
一方で、ギルド型の参加人数は絞っていて、今年は8名でした。というのも、人数を絞ることで、1人ひとりへの手厚いサポートを行いつつ、迅速にフォロー・サポートができる環境づくりを目指しているからです。また、タスクの数に対してインターン生の人数が多すぎると、選べるタスクが限られてしまうことも理由の1つです。多様な事業・技術を知ってもらいたいという狙いを達成するためにも、ギルド型は少ない人数で運用しています。
——学生の中には、インターンシップに参加することで選考ステップの一部免除などを期待しているかと思います。貴社は、インターンシップと選考をどのように関連付けていますか。
インターンシップに参加した学生には、一律で特別選考を案内しています。通常は書類→1次選考→2次選考→最終選考という流れですが、インターン生は書類選考をスキップできます。就業型とギルド型でマッチ度が高かった学生は、1次選考をスキップする場合もあります。
インターンシップから入社してくれた学生は、「働く人の雰囲気がよい」「チームで働くイメージがわいた」といった印象を持って入ってくれていて、他の新卒と比べて解像度が一段高いと感じます。
ただし現状、インターンシップから内定にまで進む割合は10%~30%ほどで、あまり高くないことが課題です。というのも、以前はインターンシップに参加してもらうことが目的になっていて、DMMという会社に興味持ってもらうためのアトラクトが不足していました。「DMMってこういう会社なんだな」と解像度高く持ち帰ってもらうために、興味を引けるコンテンツを強化しているところです。