「人材活用力」を高める2つのポイントとは
では、人材活用力を高めるには具体的にどうすればよいのか。花岡氏は「人事と部門の協働」と「人事データの活用」をポイントとして挙げる。
前者について、花岡氏は採用戦略の変化などを踏まえながら次のように話す。
「昨今は事業環境の変化が著しく高速化し、業務の細分化や高度化も進んでいます。加えて、転職が一般的になったことで、即戦力人材をいかに確保できるかがポイントになっています。
こうした状況において、従来の新卒一括・終身雇用を前提とした、人事主導の中央集権的な採用体制では対応が遅れてしまいます。そこで、部門主導の採用体制の必要性が生じているのです」(花岡氏)

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従来であれば、採用した人材が長期的に在籍するのが当たり前だったことから、じっくりと育成し、各現場に配置することができた。また、ゼネラリストへの育成が中心だったため、人事部主導でも問題がなかった。
一方、昨今は転職が当たり前になったことで、人材育成にかけられる時間が減少。加えて業務の細分化や高度化により、ゼネラリストではなくスペシャリスト人材のニーズが高まっている。そうした即戦力人材は、人事よりも現場のほうが解像度が高い傾向にあることから、人事はあくまでプロジェクトマネジャーのような役割に徹し、現場部門といかに協働していくかが重要になっていると花岡氏は話す。
「当社が支援したあるクライアントでは、人事と部門双方の連携が不十分という課題を抱えていました。そこで、双方のコミュニケーションを活発化させることで、『部門で何が起こっているのか』『今、どんな人が必要なのか』といった視線を合わせることに成功し、採用活動の強化につながりました」(花岡氏)

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人事データ活用は、2段構えで考える
そして、人材活用を考えるうえで欠かせないのが、人事データの活用だ。「データの整備」と「そのデータをいかに活用するか」という2つの視点で進めていくとよいのだという。
データの整備としては、社内にあるポジションの言語化・可視化および社員情報の可視化を行う。花岡氏は、よくある課題やポイントについて次のように話す。
「データ整備では、『社員のレジュメ情報の陳腐化』と『ポジション要件の定義がうまくいかない』という課題をよくお聞きします。前者は『社員のスキル・経験を可視化したいものの、1〜2回のアップデートにとどまってしまい、その後の情報更新が滞る』といった課題です。後者は、これまでゼネラリスト志向で人材育成を行ってきた企業で頻発する傾向があります。
ただ、ポジションや社員の情報がない限り、社内にあるキャリア機会を提示できませんし、人事としてもポジションごとに最適な人材配置を行ううえでの機会損失となってしまいます。もちろんすべての人事情報を明らかにするのは難しいかもしれませんが、『どのような情報を、どのくらいの頻度・鮮度で提供するか』といった戦略を定めて取り組むとよいでしょう」(花岡氏)
データの整備をしたうえで取り組むべきが、人事だけでなく部門でのデータ活用促進だ。「マッチ度」という形で、社員とポジションの相性をサジェストする仕組みをつくるのも有効だ。こうした取り組みによって、社員が「自身のキャリア形成の役に立ちそうだ」と感じれば、自らの経験やスキルといった情報を更新するモチベーションにもつながり、好循環が生まれる。

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