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HRzine Day(エイチアールジン・デイ)は、人が活き会社が成長する人事のWebマガジン「HRzine」が主催するイベントです。毎回、人事の重要課題を1つテーマに設定し、識者やエキスパードが持つ知見・経験を、参加者のみなさんと共有しています。

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2024年7月25日(木)10:30~17:30

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これからのIT人材に求められるもの| 第2回

会社が取らせる資格は従業員のためになるの? そもそも会社の利益になるの?


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 企業の人材育成や人事評価にも利用されているIT資格。しかし、「知識の獲得とキャリアアップ」という本来の目的に適っているのでしょうか? 今回は、資格取得を命ぜられる立場の従業員と、資格を使って戦力を高める立場の人材開発担当や管理職という両方から、会社が資格を利用する意味と、資格取得のモチベーションの持ち方について考えてみます。

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IT企業で採用にかかわる方に聞いてみました

ここ2~3年、キャリア教育に関連して、大学の授業にゲスト講師として呼ばれる機会が増えました。実際に社会で働いている人の生の声を聞く、というのが目的です。その中には、IT業界への就職を考えている学生さんも多く、次のような質問をよく受けます。

「どんな資格を持っていると就職に有利ですか?」
 「入社するまでに何を勉強したほうがいいですか?」

そこで、実際にIT企業数社の管理職であり採用面接にも関わる方々に、この質問をぶつけてみました。

「どんな資格を持っている人を採用しますか?」
 「入社するまでに何を勉強してきてほしいですか?」

(学生さんたちにとっては)意外な、そして(読者のみなさんや私たち社会人経験者にとっては)予想どおりの回答が返ってきました。

「別に資格は持っていなくていいよ。会社で教えるから」
 「社会に出る前に勉強しても、実践的ではないから、期待していないよ」
 「常識とか、人としての最低限のマナーとかを持っていてくれればいいよ。コミュニケーションが取れて、熱意があることが重要」

つまり、「入社前に学ぶことは資格であろうと役に立たない」と判断されているわけですが、その背景には、自社で必要とされるスキルは決まっており、そこから外れるものは何であれ使えない無駄なもの、という考えがあるのかもしれません。

人事評価のための資格取得は大切だが社内の基準に安住しては危ない

企業では、事業戦略に基づき、どのような人材を育成していくべきかの人材開発戦略と、それを実現するための具体的な計画が立てられており、キャリアアップのためのマイルストーンが人事評価制度と連動されています。このマイルストーンをまとめたものを「社内スキル標準」などと呼んでいる企業も多いのではないでしょうか。

IT業界(IT企業とユーザー企業内の情報システム部門)では、IT人材育成に関してスキルという観点から参照する標準的なマップが作成されており、「スキル標準」と呼ばれています[1]。企業によっては、自社の人材開発戦略に合わせてそれらスキル標準をカスタマイズし、自社に特化したもの(いわゆる「社内スキル標準」)を作成しています。

社内のスキル標準では、企業や官公庁、業界団体などが実施している社外の試験・資格と、社内の独自試験(筆記試験や口頭試験)、実務経験などがそれぞれのレベルにマッピングされ、人事評価の対象となります。したがって、職位を上げるためには(ひいては昇給のためには)、実務経験を積むだけでなく、社内の人事評価制度を理解し、マイルストーンとなっている資格を1つ1つ取得していくことも大切になってきます。

ただし、社内のこのようなスキル標準や人事評価制度は、一度作られるとなかなか改版されません[2]。ビジネスの変化の速度がどんどん速くなっている現代においては、そのギャップはどんどん広がっていきます。そのため、社内だけでなく業界全体や世の中に対してアンテナを張り、次のようなことを意識して自ら動くことも重要になってきます。

  • 自社の事業目標を元に考えると、どのような人材が求められているのか
  • 世の中で注目されているスキルや人材はどのようなものがあるのか

 

[1]: EnterpriseZineの記事「ITSS/UISS/ETSS ~3つのスキル標準の今後の展開~」が参考になります。

[2]: そのため数年単位で、本当に必要とする人材と「ずれ」が生じる場合があります。

 

人材開発担当・管理職は育成にかける想いを語って

前述のとおり、企業の人材育成には、事業理念や事業戦略に即した人材開発戦略と、それを実現するための人材開発計画やそれに基づくスキル標準や評価制度が必要です。また、そのための人材育成(教育)も必要ではあるのですが、徹底したほうがよいのが、従業員への「意識付け」です。

  • どのような人材開発の戦略を掲げているのか
  • なぜ、このような人材開発に重点を置いているのか
  • なぜ、このようなスキル習得や資格取得を推進しているのか
  • どのように成長し、どのように貢献してほしいのか

多くの企業で、従業員が「この資格を取得しないと昇進できないから」といった浅い動機で研修を受けている姿を見かけます。これでは、資格を取っただけで仕事に活かせない人を増やすだけです。人材開発の責任者や上司である方は、その想いを従業員に熱く伝えるよう心がけることをお勧めします。

もし、従業員が「資格は会社からいわれて取らされるもの」と思っているようなら、企業の人材開発戦略や、それを従業員に伝える姿勢に問題があると思うべきでしょう。

[COLUMN]人材開発・活用のトレンドが変わった

これまでの人材開発は、上述したとおり、事業戦略に基づいた人材開発戦略の策定から始まり、それに必要な人材を(言葉どおり)開発するという考え方が主流でした。

これまで主流だった事業戦略に基づいた人材開発戦略の策定から始まり、それに必要な人材を開発するという考え方
これまで主流だった事業戦略に基づいた人材開発戦略の策定から始まり、
それに必要な人材を開発するという考え方

これは「不足している能力を学習して補完する」という考え方です。しかし、最近では「各自の長所を伸ばし、うまく組み合わせる」という考え方がトレンドの1つになってきています。つまり、人を組み合わせるのではなく、能力を組み合わせて戦略を実現することが、これからの企業にとって重要なのだといえます。

人を組み合わせるのではなく、能力を組み合わせて戦略を実現する
人を組み合わせるのではなく、能力を組み合わせて戦略を実現する

もちろん、事業戦略に整合の取れたリソース戦略、さらには採用と人材開発があることが大前提です。その上で、最低限必要な能力を育成します。そして、より強い組織とするには、個々の強みを分析し、認識し、どのように伸ばせるか、どう組み合わせるとより効率的かつ効果的なパフォーマンスを出せるかを考え、実践していくのです。

人こそ企業の命です

従業員の立場にある方は、「資格を取らされる」といった受け身の発想ではなく、社内・社外を問わずキャリアアップできるようになるために、チャンスがあれば積極的かつ計画的に資格を取得してみましょう。

人材開発担当や管理職のみなさんは、ビジネスをどのように伸ばすために、どのような人材が必要なのかを中長期で考えながら、そして(これが大切であり大変なのですが)自分の言葉で伝えながら、従業員のみなさんと一緒に成長していきましょう。

人は企業の根幹であり、命であり、企業を動かすエンジンです。1つ1つのエンジンが最適に動けるようにするために教育があり、資格によってその機能やレベルがはっきりわかるのです。最適なエンジンを最適に組み合わせることによって、企業という大きなマシンに命が吹き込まれるのです。

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この記事の著者

最上 千佳子(モガミ チカコ)

日本クイント株式会社 代表取締役社長。システムエンジニアとしてオープン系システムの提案、設計、構築、運用、利用者教育、社内教育など幅広く経験。顧客へのソリューション提供の中でITサービスマネジメントに目覚め、2008年ITサービスマネジメントやソーシングガバナンスなどの教育とコンサルティングを提供す...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://hrzine.jp/article/detail/67 2016/02/01 14:35

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