日本人事経営研究室は、全国の中小企業の経営者および人事担当者と、転職経験がある一般社員を対象に、中小企業が抱える人事課題に関する意識調査を実施した。
経営者・人事と転職経験のある社員で、退職理由の意識にギャップが生じている
転職経験のある社員に会社を退職した理由を聞いたところ、「職場環境」が39.0%と最も多い結果となり、次いで「給与や待遇への不満」が38.0%、「会社や自分の将来性に不安を感じた」が30.0%、「仕事のやりがいがなかった」が21.0%、「上司への不満」が19.0%と続いた。
ほかにも、「人事評価制度が不十分だった」「人事評価制度に納得がいかなかった」「会社の経営計画、成長戦略、ビジョンが見えなかった」「キャリアの成長機会がなかった」など、組織運営や人事評価制度に関わることが退職理由として当てはまる人も一定数いることが分かる。
「職場環境」や「給与や待遇への不満」という理由に関しては経営者・人事担当者と認識の差はないものの、「会社や自分の将来性に不安を感じた」を退職する理由に選んだ人は30.0%となった。「会社や自分の将来性に不安を感じた」ことが、社員が退職する理由だと考える経営者・人事担当者は18.0%と低く、ギャップが生じていることが明らかとなった。
![[画像クリックで拡大]](http://hz-cdn.shoeisha.jp/static/images/article/6719/1.png)
![[画像クリックで拡大]](http://hz-cdn.shoeisha.jp/static/images/article/6719/2.png)
経営者・人事担当者に聞いた社員が退職すると思う理由
経営者・人事担当者に対して、社員が退職する理由について該当するものを聞いたところ、49.0%が「給与や待遇への不満」と答え、最も多い結果となった。一方で、社員の退職理由が「分からない」という人も2割に上り、経営者・人事担当者が明確に理由を把握できていないケースもあることが浮き彫りになった。
![[画像クリックで拡大]](http://hz-cdn.shoeisha.jp/static/images/article/6719/3.png)
半数以上の社員が退職時に本当の理由を伝えていないことが判明
転職経験のある社員に、退職する際に人事担当者や上司へ本当の理由を正直に伝えたかどうかを聞いたところ、半数以上の54.0%の人が「本当の理由を伝えずに退職した」と回答した。
![[画像クリックで拡大]](http://hz-cdn.shoeisha.jp/static/images/article/6719/4.png)
退職する際に伝えた建前上の理由として、「家庭の事情」が38.9%で最も多く、次いで「新しい挑戦をしたい」が25.9%と続いた。半数以上の人が本当の理由を伝えていないことから、人事担当者や上司に対して本音を言いづらい環境であることがうかがえる。そのため、経営側が離職要因を正しく把握できず、改善につながりづらい可能性があるという。
![[画像クリックで拡大]](http://hz-cdn.shoeisha.jp/static/images/article/6719/5.png)
社内に「静かな退職者」がいると回答した経営者・人事担当者は約半数
経営者・人事担当者に社内に「静かな退職者」(退職はしないが仕事に対する熱意を失っていて、与えられた以上のことはやらない状態の社員)がいるかどうかを聞いたところ、半数近くの47.0%がいると回答。近年、拡大していると言われている最低限の仕事のみを行う「静かな退職」の実態が明らかになった。
![[画像クリックで拡大]](http://hz-cdn.shoeisha.jp/static/images/article/6719/6.png)
社員の7割が「与えられた仕事以外はやりたくない」
転職経験のある社員に対し、働く中で与えられた仕事以外はやりたくない、仕事をたくさん振らないでほしいと感じることはあるかを聞いたところ、「かなり感じる」と「少し感じる」を合わせると7割という結果になった。
![[画像クリックで拡大]](http://hz-cdn.shoeisha.jp/static/images/article/6719/7.png)
そう感じる理由を聞くと、「業務量がすでに多くて手一杯だから」が42.9%、「努力しても報酬に反映されないと感じるから」が37.1%、「努力しても評価に反映されないと感じるから」が35.7%と続いた。日常業務の負担感に加えて、努力が報われないという意識がモチベーションを下げ、「静かな退職」予備軍になっている可能性がある。また、明確な評価制度がないため、成果に対する報酬や昇格の決定が属人的で不透明になっていることも一因として考えられるという。
![[画像クリックで拡大]](http://hz-cdn.shoeisha.jp/static/images/article/6719/8.png)
経営者・人事担当者が、社員のモチベーションをアップするためにしていること
経営者・人事担当者に社員のモチベーションをアップするためにしていることは何かを聞いたところ、「インセンティブ制度(賞与・昇給)」が43.0%で最も多かったのに対し、「特にしていることはない」を選んだ人も39.0%という結果となった。経営者・人事担当者は、社員のモチベーションの低下を感じられた場合にも、特に策を講じていない可能性があることが浮き彫りとなった。
![[画像クリックで拡大]](http://hz-cdn.shoeisha.jp/static/images/article/6719/9.png)
6割超の中小企業が人事評価制度を導入していないことが明らかに
経営者・人事担当者に、人事評価制度(評価、昇進、給与体系など)を導入しているかを聞いたところ、62.0%の企業が導入していないことが分かった。
![[画像クリックで拡大]](http://hz-cdn.shoeisha.jp/static/images/article/6719/10.png)
「導入していない」を選んだ人に理由を聞くと、「業績に影響しないから」が74.2%と大半を占める結果となり、評価制度を業績と直結しないものと捉えている経営者・人事担当者が多いことが明らかになった。評価制度を導入していないことが、社員が感じる会社の方向性への不安や、努力しても報われない、という気持ちにつながっている可能性が考えられる。
![[画像クリックで拡大]](http://hz-cdn.shoeisha.jp/static/images/article/6719/11.png)
なお、調査の概要は次のとおり。
- エリア:全国
- 調査対象:25~60歳の経営者および人事担当者、および人事権のある役職の社員100名、転職経験がある一般社員100名
- 調査期間:2025年5月15~19日
- 調査方法:インターネット調査
【関連記事】
・退職で困難な経験をした人ほど、現職で「気持ち」を言い出せない—Wandering Seagull調べ
・離職防止策で取り組みたいこと「育成制度の構築」「上司・管理職の教育」—ALL DIFFERENT調べ
・「5月病」が理由で転職した人は約2割 半数以上の企業が5月病による退職防止策を実施—マイナビ調べ