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日本企業はスキルベース組織を導入すべきか?「日本型スキルベース」のススメ | 第5回

“世界一学ばない国”は変われるか?「スキルベース社会」の実現で、日本も自ら人生と学習を設計する時代へ

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 本連載では、これまで企業におけるスキルベース(スキルベース組織)の導入について論じてきた。一方でスキルベースは企業内で止まる考え方ではなく、次のステップとして社会全体への適用(スキルベース社会)が期待される。実際に、シンガポールなどでは、全国民のスキルを管理する仕組みがすでに導入されている。近々、日本でも政府主導で保有スキルに関するプラットフォームが構築され、教育機関・教育産業等との連携などエコシステムの整備が本格的に始まる予定だが、その先には「自らの人生と学習を設計する時代」の実現が期待される。

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スキルベース組織のその先、「スキルベース社会」を考える

 スキルベース社会とは、企業に導入するスキルベース(スキルベース組織)の対象範囲を拡大した概念であり、社会全体でスキルを活用していこうという考え方である。

 筆者の理解では、スキルベース組織とスキルベース社会は対象範囲の違いがあるだけで、基本的な考え方は同じである。日本では、企業内での教育が手厚く、学ぶ年月も長いので、スキルベース組織の影響が大きいが、スキルベース社会へ向けた基盤整備も並行して進めるべきであろう。その主人公はあくまでも個人であり、スキルベース社会は個人が豊かで充実した人生を送ることを目的とする。

 人は生まれてから死ぬまで、生涯にわたり学び続ける。保育園で学び、小中高校・大学で学び、会社で学び、定年後も豊かな人生の締めくくりとしてさらに学ぶ。そうであれば、それらの学習で得るスキルを管理・可視化することは、人生の様々な場面(就職、転職、キャリア開発など)で役に立ったり、さらなる学習のモチベーションとなったりするであろう。

 国家の視点からも、今後必ず突入するであろうAI革命に向けて、人口減少ゆえに高効率な社会をめざす我が国にとっては、国民1人ひとりがスキルを獲得して個人の能力をレベルアップすることは必要不可欠であり、そういった社会基盤の整備は必須である。

 先進諸国では、全国民のスキルを管理・活用する試みがすでに始まっている。たとえばシンガポールでは、2015年から政府主導で「Skills Future Singapore」というプロジェクトが開始され、スキルを起点にした能力開発・キャリア形成を推進する仕組みが提供されている。また、他国でも同様の取り組みが始まっており、海外事例は次回(第6回)で詳しくご紹介する。

日本でも国民を対象としたプラットフォームを構築予定

 日本でも今後、政府主導でスキル情報基盤の構築が始まろうとしている。2024年11月に「国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策」が閣議決定し、その中で「デジタルに関する個人のスキルアップを促すため、スキル情報を蓄積・可視化する基盤を構築し、継続的な学びを後押しする」として、「デジタル人材育成エコシステム推進事業[1]」が記載されている。日本でも着々と準備が進んでいるのだ。

[1]: 同年には「デジタル人材育成エコシステム構築事業」として補正予算案が計上された。

 具体的には、情報処理推進機構(IPA)において「デジタル人材育成・DX推進プラットフォーム(仮称/以下、日本版プラットフォーム)」の構築が今後検討されることになっている。このスキル情報基盤を中核とするプラットフォームが構築されれば、個人向けにアカウントが付与され、次の機能が実現される予定である。

  1. スキル情報の蓄積・可視化
  2. 動的なスキル把握
  3. スキル情報のビッグデータ化
  4. ともに学び合うコミュニティ形成

 日本版プラットフォームの構築に向けて、すでにIPAの体制強化が始まっている。まずは、IPAが所管する情報処理技術者試験の資格情報がここに蓄積・可視化される予定である。

成否を握る「エコシステム」——教育機関・教育産業との連携など

 日本において、このプラットフォームははたして成功するだろうか。先進諸国のように、個人のキャリア形成に寄り添い、産業界の期待に応えることできるだろうか。

 その成否を握っているのは、「エコシステム」だと筆者は考える。エコシステムとは生物学の用語で、自然界における「生態系」を意味するものだが、昨今ではビジネスの世界でもよく使用される。多様なステークホルダーや団体・企業群が協力・補完関係を築き、全体として共存共栄する枠組みを目指す言葉だ。

 日本版プラットフォームでいえば、IPAが構築するスキル情報基盤の周辺に、大学・大学院における履修情報などを蓄積したり、研修事業や転職支援を行う企業群がその情報を活用したりすることにより、プラットフォームが活性化することがイメージできる。上述の「総合経済対策」にもエコシステムとの言葉が掲載されており、その重要性が認識できる。

 ただし、エコシステムの本格的な検討はまだこれからであり、日本版プラットフォームが個人や社会にとって有益なものとなるように、日本人の英知を結集してさまざまな知恵やアイデアを実現していきたい。

次のページ
個人の意識改革なしに、日本版プラットフォームの成功はあり得ない

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この記事の著者

角田 仁(ツノダ ヒトシ)

1989年に東京海上火災保険に入社。主にIT部門においてIT戦略の企画業務を担当する。2015年からは東京海上のIT企画部参与(部長)および東京海上日動システムズ執行役員。2019年、博士号取得を機に30年間務めた東京海上を退職して大学教員へ転じ、名古屋経済大学教授や千葉工業大学教授を歴任した。現在...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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