今回の話者
人事

北野 高英(きたの たかひで)氏
パーソルキャリア株式会社 人事本部 本部企画グループ マネジャー
パーソルキャリアに新卒で入社。営業を経験したのち人事部に異動し、HRBP・組織人材開発・人事企画の領域を担当。現在は人事部全体のPMOとして各重要施策を推進している。
ITエンジニア

渡邉 裕樹(わたなべ ゆうき)氏
パーソルキャリア株式会社 データ・AIソリューション本部 データ・AIインフラ統括部 データインフラ部 データアーキテクトグループ マネジャー
大学卒業後、SIerとしてキャリアをスタートし、SCMやDWHのシステム刷新、企業合併に伴うシステム統合に従事し、要件PHから運用保守まで幅広い実務を経験。その後、小売業の社内SEに転職し、全社データ分析基盤の刷新を構想企画から全社の展開まで実施。2022年6月より現職にて、人事領域のデータ基盤構築およびデータマネジメントを推進。

長谷川 智彦(はせがわ ともひこ)氏
パーソルキャリア株式会社 人事本部 人事IT推進部 人事PMグループ リードコンサルタント
パーソルキャリアへ新卒入社。データアナリストとして事業のデータ分析案件やAIモデルの開発・改善作業、データ活用プロジェクトの企画・プロジェクトマネジメントを担当。2022年度から人事領域でのデータ活用やBI開発、人材育成に取り組んでいる。ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会の上席研究員も兼ねている。
人事データ基盤内のデータを利用するための仕組み
——人事データ基盤を活用する企画の審議体制を整えた背景とは?
渡邉 弊社では2023年から、社内の人事領域でのデータ活用を推進するために人事データ基盤の構築を進めてきました。
それと並行して、データ基盤に蓄積したデータを利活用していく必要があったのですが、人事データには個人情報や要配慮個人情報が多いため、無条件には開放できません。そこでまず、人事内でのデータ活用ニーズをしっかりと把握することにしました。加えて、社内のコンプライアンスの審査を通す前に、提出された企画におけるリスクや懸念点を、過去の事例をもとに洗い出すための審議体制と審議フローを整備しました。
——審議フローと審議の内容はどのようなものか。
長谷川 審議フローは、「人事データ基盤内のデータを活用する部署に企画を整理し申請してもらう段階」と、「企画内容を社内のデータマネジメント審議会(以下、審議会)で審議する段階」に分かれています。

企画を整理し申請してもらう段階では、データスチュワードと呼ばれる、社内のデータ活用の要件を整理する人材を置いています。企画そのものは人事の各部署で作成して申請を上げてもらうのですが、それだけだとデータの利用目的や活用したいデータの情報が一部不足することがあります。そのため、データスチュワードをアサインして、企画の壁打ちやレビューを担ってもらっています。
データスチュワードには、データ活用の企画を立案・推進した経験のあるメンバーに就いてもらいました。ちなみに、私もデータスチュワードの1人です。
データスチュワードは、企画にあるデータの利用目的がデータの利用規約の範囲内であるかどうか、人事データ基盤内のどのテーブルやカラムを使用するのかといったことから、その時点での人事戦略との関連性、開発内容やスケジュールの妥当性まで確認しています。
これらを確認したうえで足りない場合は追加検討を人事に依頼しますし、人事データ基盤内のデータに関しては僕らでも調査を行い、利用要件にかなうデータなのかを確認します。手間がかかるように見えますが、審議会の時間は限られているため、事前に整理することで審議の効率化を図っています。
審議の効率化と並行して、データオーナー(人事の業務システム担当者)への周知も行っています。具体的には、データ活用企画の承認後、該当するデータオーナーにデータの活用目的を伝えています。これによって、データオーナーは自分たちのデータがどのように役立っているかを理解できますし、今後データ品質の向上に関わっていく良いきっかけになると考えています。

また審議会では、データスチュワードが整理した内容をもとに、データマネジャーと呼ばれる人材が追加のリスクや懸念点を確認したうえで承認を行っています。データマネジャーは人事だけでなくテクノロジー側(ITエンジニア側)の人材も混ぜた複数名で構成しており、判断が偏らないようにしています。
——審議フローについて他に取り組まれていることは?
北野 審議方針を整備したり、申請フォーマットや申請システムを更新したりしています。立ち上げ当初には、人事データ基盤を利用するにあたっての規約を、テクノロジー側と連携して作成しました。現時点では事業部や経理が保有するデータが混ざらないようにするため、人事業務に関連するデータに限定した基盤であることや、その利用に関する方針・留意点・用語をまとめています。
ただ、初めての取り組みということで調整の必要があったため、申請で挙がってきた利用ケースに応じて、審議の方針や内容を審議会メンバーと擦り合わせながら、回答内容が個別ケースでブレないようにしています。たとえば、どういったデータであれば人事データ基盤に格納できるか、人事組織以外から人事データ基盤に格納されているデータを活用したいという相談があった場合にはどうするのかなど、今後相談が発生する可能性が高いものも含めて、審議方針を順次整えています。
申請フォーマットに関しては、申請された企画ごとで記載内容にばらつきがあると、確認や整理に時間がかかってしまうため、確認するべき内容をフォーマットに記載し、人事内ではそれを展開して使ってもらうようにしています。初年度は手探りだったこともあるので、まずは完璧につくるのではなく、最低限の雛形をつくりました。今年は1年運用をしてみた結果をもとに修正を加えていっています。