AI活用で人事はどう変わるか——「ポケットの中のHRコーチ」を全員に
——生成AI、そしてエージェント型AIの大きなトレンドがHR分野にも押し寄せています。WorkdayのユーザーであるCHROなど人事担当は、どのような課題や懸念を抱いていると見ていますか。
AIは従業員、企業文化、組織のリーダーシップ、スキルアップなど広範囲に影響を与えると予想されます。顧客との会話から、人事部門は「ビジネスにリスクを与えることなく、AIをどう実装・展開するか」という課題を抱えていることが分かります。AIがもたらす組織の変革をどのようにナビゲートするのか、人事も重要な役割を担います。
また、AIの適用について、AIが適切なタスクや場面はどこで、人間が引き続き担うタスクや場面はどこなのかという点で、仕事が再設計されることになります。そして、AIと人間をどう配置するかは、企業・組織にとって実に戦略的な課題となることでしょう。人事もともに考えるべき経営課題です。
Aashna Kircher(アシュナ・カーチャー)氏
CHRO室、グループゼネラルマネージャ、Workday
2014年にWorkday入社。この10年間、世界の大企業向けにエンタープライズ製品の開発を行うさまざまな職務を経験してきた。チームを成長させ、有意義で永続的な製品エクスペリエンスを提供することに強い情熱を持つ。Workdayの入社前は教育コンサルティングに従事していた。米ハーバード大学でMBAを、米デューク大学で心理学の学士号を取得。
——AIがもたらすプラスの機会やメリットについて、Workdayはどのように見ていますか。
「効率性」「人の仕事の質の向上」「ビジネスリスクの軽減」と大きく3つ挙げられます。
1つ目の「効率性」について、AIは驚異的なレベルでの生産性が得られる技術です。繰り返しの多い手作業を自動化し、ミスなく疲れ知らずで処理できます。人が好んでやらない仕事をAIに任せることができれば、人はより重要な、創造的で戦略的なことに時間を使うことができます。
2つ目の「人の仕事の質の向上」については、Workdayでは、AIは「人材の可能性を増幅する」という機会を与えるものでもあると見ています。HR分野ではポリシーを参照したりコーチングの機会を得たりする人、人事や報酬体系について専門家やコンサルティングといったビジネスパートナーなどとやり取りできる人は、幹部など上級職の人に限られます。しかしAIを活用することで、それを組織全体に拡大できます。適切にトレーニングされたAIを用いることで、上級職に就いていない人でも“ポケットの中のHRコーチ”としてAIから専門的なアドバイスを得られます。中間管理職は仕事の効率化が改善し、報酬に関する意思決定などを適切に考えることができるでしょう。
3つ目の「ビジネスリスクの軽減」については、HRの重要な役割の1つであるリスク管理にAIを活用することで、組織が適切にコンプライアンスを遵守する領域を見つけて分析したり、ルールや規則の変更に迅速に対応したりすることが可能になります。ここも、人よりAIのほうが得意な分野です。
——CHROや人事担当は現在、どのようにAIを活用しているのでしょうか。
人事にはポリシーをはじめ多数のドキュメントがあります。そのため、最も多いユースケースは、汎用のエンタープライズ向けAIツールを使って情報を要約したり、大量のコンテンツを処理したりするというものです。HRポリシーについての質問や職場トラブルの相談に対応するケースマネージャー(個別案件の担当者)は、AIを使うことで迅速に回答できるようになります。

