スキルは新しいサプライチェーン——SAPの人事責任者
基調講演では、11万人の社員を抱えるSAPで最高人材責任者 兼 労務担当取締役を務めるGina Vargiu-Breuer氏が、将来の人事について「スキルのサプライチェーン」「AIはツールメイト」などのキーワードでSAPの考えを説明した。
「SuccessFactorsの調査では、仕事の未来は人間とAIが一緒にあることを示している。人間対AIではない」とVargiu-Breuer氏。実際に、AIはすでにあらゆるところで人間を支え、労働の現場を変革しつつある。Vargiu-Breuer氏によれば、従業員は自身のタスクの42%がAIで実行できると見積もっているとのこと。「AIは反復的なタスクを削減するだけではなく、コーチング、進捗管理、予測モデリングなど、付加価値のあるタスクにも貢献している」という。さらには、従業員は意味のある仕事に集中でき、新しいスキルや知識を身に付ける時間を得ることもできる。
そのようなことから、SAPではAIを「ツールメイト(Tool Mate)」と位置付けている。AIは単なるツールでもなく、完全なチームメイトでもない。「人とAIが強力なチームメイトとして協力する」という考え方だ。
このような状況で、人事担当が問うべきは「AIが何ができるか」ではなく、「AI時代において何が仕事への動機付けをし、人々にとって意味のあるものにするのか」だという。
具体的には、AIを独立した“操作者”として受け入れ、その利点を活用して、自分の仕事を向上させるのかを問う必要がある。目指すのは、人間と技術の強みを組み合わせ、それぞれが単独で達成できることを上回る成果を生み出すこと。
その考えの下、「スキルは新しいサプライチェーン」と提唱する。「(産業革命以降)エネルギーや原材料が産業を動かしたように、AIがデジタル時代を動かす。それはスキルで形作られる」(Vargiu-Breuer氏)。
Vargiu-Breuer氏と対談したコンサルティング会社のSignal and CipherのCEOで、未来の働き方をテーマとした講演で知られるIan Beacraft氏は、「LLMが知識の獲得に大きな影響を与えており、経済協力開発機構(OECD)や世界経済フォーラムなどでは、技術スキルの“賞味期限”は18〜36ヵ月に短縮されている」と指摘した。
エネルギーや原材料を調整したように、スキルポートフォリオを動的に調整・適応できることが企業の繁栄の鍵を握る。「スキルファーストのアプローチで、組織が労働力をどのように構築するのか、採用・職務構造・学習と開発をどのように進めるのかを考える必要がある」とVargiu-Breuer氏はアドバイスした。

