4Rフレームワーク:Salesforceの労働力変革戦略とは
Salesforceは世界経済フォーラムやLinkedInとの共同研究を通じて、「4R」と呼ぶフレームワークを開発した。Redesign(再設計)、Reskill(リスキリング)、Redeploy(再配置)、Rebalance(再バランス)——AIエージェント時代の労働力変革を体系的に進めるための実践的な指針だ。
以下、詳しく見てみよう。
Redesign(再設計)
AIにより「すべての仕事が根本から再設計される」とScardino氏。職種を問わず業務プロセス全体を見直し、どのタスクをAIエージェントに任せ、どこで人間の判断と創造性を活かすかを判断する必要がある。
Reskill(リスキリング)
Redesignで業務の土台を理解した後は、社員のスキルのアップデートだ。Salesforceではすべての社員が業務でAIエージェントを使うように、自社が展開するAgentforceの認定プログラムの基礎認定の義務付けを行っている。幹部には中級の認定取得を促しているという。これをScardino氏は、「経営層自らがキーボードを叩いてエージェントを構築している」と表現した。
リスキリングでは、AIエージェントのスキル(AIのリテラシー、データリテラシー)に加え、ビジネススキル、人間的なスキルと大きく3グループから10のスキルを「トップ10スキル」として定めているという。人間的なスキルには、自己認識、感情知能、創造性などがあるという。技術スキルだけでなく人間固有のスキルも同等に重視する背景には、「学び続ける能力こそ重要なスキル」という認識がある。そこで、継続的な学習を組織文化に組み込んでいる。
Redeploy(再配置)
AIエージェントの特徴である「部門のサイロを超える」の影響もあり、職務の境界が曖昧になるというトレンドが加速している。「役割が統合し始めている」とScardino氏。たとえば、カスタマーサポート専任の従業員が、サポート業務の延長として、AIエージェントの支援を得て営業提案を行うことも可能になった。「テクノロジーへのアクセスにより、異なる分野のスキルを組み合わせた業務が可能になる」とScardino氏。固定的な職務記述書に縛られるのではなく、従業員を必要な場所に柔軟に配置できるようになったのだ。
ジョブ型が定着していない日本企業にとっては、興味深いトレンドといえそうだ。
この戦略を支えるのが、Salesforceが2024年に立ち上げた社内の人材マーケットプレイス「Career Connect」だ。従業員の職歴、スキルから、個別の学習パスと新しい役割やスキルアップの機会を紹介する。Scardino氏によると、「2025年、社内で新たに必要になった職務の50%は、(外部からの採用ではなく)社内の人材で埋めることができた」とのこと。この数字はそれまでの22%からの増加となる。
Rebalance(再バランス)
最後のRは、人間とAIエージェントの適切な役割分担の見極めだ。「人材を再配置し、デジタルと人の労働力を再バランスすることがカギ」とScardino氏。単にAIエージェントを導入するだけでなく、どの業務を人間が担当し、どの業務をAIエージェントに任せるかを継続的に調整する必要がある。AIエージェントと人間、それぞれが得意なことに集中できる最適なパートナーシップを構築することが目標だ。

