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人事労務事件簿 | #67

会社が十分な確認・調査なしに退職勧奨したことにつき、パワハラと認定(東京地裁 令和5年12月7日)

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 上長が部下に注意や指導をすること自体は、適正な業務のうちといえますが、その中で会社側が「退職勧奨」まで行ったとしたらどうでしょう。さらに、その退職勧奨が十分な事実確認や調査なしに行われたとしたら……。今回紹介する事案は、会社からの退職勧奨に対し、従業員が「パワーハラスメント」だとして会社を訴え、認められて勝訴したものです。どのような背景で退職勧奨を行ったのか、なぜ裁判所はパワーハラスメントを認めたのか。本記事でご確認ください。

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1. 事件の概要

 本件は、被告(以下「Y社」)と雇用契約を締結して就労していた原告(以下「X」)が、Y社に対し、雇用契約上の地位確認および不法行為に基づき、慰謝料等を求めた事案です。

 本稿では、さまざまな争点の中から、パワハラの認定について取り上げます。

(1)当事者等

 X(平成元年5月19日生まれ)は、平成4年から本邦に在留している中華人民共和国国籍の女性です。Xは、平成30年6月1日にY社に入社しました。

 Y社は、平成27年9月3日に設立された中国広東省恵州市に本社を置く会社の日本法人であり、アマゾンのECサイトやディストリビューター2社を通じて日本国内でグループの電機製品を販売していました。

 A(以下「A代表」)は、Y社設立時から令和元年11月末までY社の代表取締役を務めていた者であり、代表取締役退任後は同社の顧問を務めています。

 O(以下「O副社長」)は、平成30年12月ごろまでに中国本社からY社の副社長に就任した者であり、令和元年12月1日にY社の代表取締役に就任しました。

 B(以下「B」)は、平成30年12月ごろからY社の会議に出席するようになり、平成31年2月1日に営業本部計画物流部課長兼人事部課長としてY社に正式に入社しました。同年3月18日のY社の組織変更により人事部と総務部が統合されて人事総務部とされた際、営業本部計画物流部課長兼人事総務部課長となりましたが、同年8月にY社を退職しました。

(2)XとY社との間の雇用契約の成立および労働条件の要旨

 Xは、Y社との間で、平成30年6月1日、以下の労働条件の雇用契約を締結しました(以下「本件雇用契約」)。

  • 業務内容:経営本部長補佐業務およびその他会社が必要に応じて指示したもの。
  • 契約期間:期間の定めなし(入社後6ヵ月の試用期間あり)
  • 勤務時間:午前9時から午後6時まで(休憩時間は12時から13時までとする)。ただし、業務の都合上、就業時間および休憩時間を変更することがある。
  • 休日:土曜日、日曜日および祝祭日、年末年始、夏期休暇
  • 賃金:年俸制390万円。その12分の1相当額として、月額32万5000円を毎月月末締め、当月末日に支払う。
  • その他:勤務上の詳細な規程は就業規則による。

(3)1度目の退職勧奨

 Y社は、平成31年3月8日、Xに対し、XがBの業務上の指示に反抗してトラブルを発生させ、Y社の業務に重大な影響を及ぼしたなどと告げたうえ、退職勧奨を行いました(以下「本件退職勧奨①」)。その条件は、Xが本日付けで退職勧奨に応じ、翌週に業務引き継ぎを終えれば、その後は出勤しなくても同年3月分の給与および60日分の平均賃金を支払うというものでした。

 Xが退職勧奨に応じない場合、就業規則違反を理由に訓戒処分と反省文の提出を求めることが予告されました。

(4)訓戒処分

 Y社は、同月22日、Xに対し、上長の指揮命令に従わず、上長に反抗的な態度を示し、反省を拒むことおよび会社の管理体制系統を無視し、飛越行為を繰り返したことが就業規則24条1号、2号および6号の1に該当することを理由に訓戒処分(以下「本件訓戒処分」)とすることとしました。

(5)2度目の退職勧奨

 Y社は、Xに対し、一身上の都合ではなく合意退職とすることも可能であるなどして、再度の退職勧奨を行いました(以下「本件退職勧奨②」)。

(6)適応障害の診断

 Xは、同月25日、かねてより通院していたCクリニック(心療内科)を受診し、適応障害の診断を受け、少なくとも4月末までの自宅療養を要するとC1医師より指示を受け、その旨記載された診断書(以下「3/25付け診断書」)をY社に提出し、同日以降欠勤しました。

(7)休職命令

 Y社は、同月29日、Xに対し、同月25日から同年6月24日までの3ヵ月間の休職を命じる旨通知しました(以下「本件休職命令」)。

(8)復職願の提出と復職を認めず

 Xは、令和元年6月17日、Y社に対し、D医師作成の同月14日付け診断書(以下「6/14付け診断書」)を添付し、同月24日に復職したい旨記載した同月17日付け復職願を提出しました。

 6/14付け診断書には、「症状寛解し、現在通勤訓練を行い順調な回復を認めるので、6月15日以降就労可能です。ただし、当初は4時間程度より開始し、その後2ヵ月間程度の期間を経て定時勤務とすることが望ましい」と記載されていました。

 Y社は、同月24日の復職を認めず、Xの休職期間を同年10月24日まで延長しました。

(9)休職期間満了による退職扱い

 Xは、同年8月29日ごろ、D医師作成の同日付け診断書(以下「8/29付け診断書」)を提出しました。

 8/29付け診断書には、適応障害は寛解したこと、前回診断に引き続き就労可能であるが、当初は4時間程度より開始し、その後2ヵ月程度の期間を経て定時勤務とすることが望ましいことが記載されていました。

 Y社は、同年11月15日、Xに対し、延長後休職期間満了日である同年10月24日時点でも休職事由が消滅したとは認められなかったため、就業規則39条4項に基づき、同日をもって自然退職となった旨を通知しました。

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この記事の著者

坂本 直紀(サカモト ナオキ)

人事コンサルタント、特定社会保険労務士、中小企業診断士、坂本直紀社会保険労務士代表社員。就業規則作成・改訂、賃金制度構築、メンタルヘルス・ハラスメント対策社内研修などを実施し、会社および社員の活力と安心のサポートを理念として、コンサルティングを行う。
ホームページに多数の人事労務管理に関する情報、規定例、書式等を掲載中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://hrzine.jp/article/detail/7642 2026/03/31 14:00

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