必ずチェック! ポイント
- 「高年齢者の労働災害防止のための指針」は、高年齢者が安全に働き続けられるよう企業に求められる対策を示したもので、2026年4月1日から適用される。従来のエイジフレンドリーガイドラインは廃止され、法に基づく指針として位置付けられた。
- 企業は、安全衛生管理体制の確立や職場環境の改善、健康・体力の把握と状況に応じた就業上の措置、安全衛生教育の実施など、5つの取り組みを実施する必要がある。
- 対象は高年齢者を使用するすべての企業で、主に60歳以上の労働者が想定される。企業だけでなく、労働者自身も健康状態の把握や体調申告などにより対策に協力し、労使一体で安全な職場づくりを進めることが必要。
関連サイト・資料
- 厚生労働省「高年齢労働者の安全衛生対策について」
- 厚生労働省「高年齢者の労働災害防止のための指針」
3分でチェック! 高年齢者の労働災害防止のための指針
「高年齢者の労働災害防止のための指針」とは、加齢に伴う身体機能や健康状態の変化を踏まえ、高年齢者が安全に働き続けられるように、企業が講ずべき対策を示した指針です。2026年4月1日から適用され、従来の「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン(エイジフレンドリーガイドライン)」は廃止されます。
今回の見直しは、改正後の労働安全衛生法第62条の2第2項に基づいて行われたもので、高年齢者の特性に配慮した安全衛生管理体制の整備や作業環境の改善などが、事業者の努力義務として位置付けられました。
指針がつくられた背景には、高年齢労働者の増加があります。厚生労働省の統計では、60歳以上の労働者は若年層に比べて労働災害発生率が高く、災害が起きた際の休業期間が長いことが課題とされていました。さらに、働き続けるシニア世代は増加しています。これを受けて、法律に基づく指針として対策が明確化されました。
同指針では、企業が講ずべき5つの措置と、労働者への協力要請の内容が記載されています。本記事では、対象となる企業が実施すべき5つの事項など、基本事項の要旨を解説します。
対象企業
同指針は、高年齢者を雇用するすべての事業者が対象です。
すでに高年齢者を雇用している企業だけでなく、今後雇用する予定のある企業も含まれます。業種や企業規模を問わず、各事業場の実情に応じて、高年齢者の労働災害防止対策に取り組むことが求められます。
対象者
同指針は、企業などで働く、主に60歳以上の高年齢者を対象としています。
労働安全衛生法上は明確な年齢基準は設けられていませんが、高年齢者雇用安定法では高年齢者を55歳以上、中高年齢者を45歳以上と定義しています。
加齢に伴う身体機能や健康状態の変化に配慮する観点から、実務上は55歳以上の労働者を対象とし、中でも60歳以上の労働者については、より丁寧な対応が求められます。
事業者に求められる取り組み
高年齢者を雇用している、または雇用する予定がある企業は、次の5つの取り組みが求められます。
1安全衛生管理体制の確立等
- 安全衛生管理体制の確立
- 危険源の特定等のリスクアセスメントの実施
経営トップが高年齢者の労働災害防止に取り組む方針を明確に示し、担当部署や責任者を定めるなど、組織的かつ継続的に対策を実施する体制を整えることが求められます。安全衛生委員会などを活用し、労働者の意見も踏まえながら、高年齢者特有のリスクについて調査・審議を行うことも重要です。
併せて、災害事例やヒヤリハットをもとに危険源を洗い出し、リスクアセスメントを実施します。その結果に基づき、危険作業の見直しや設備改善、作業手順の整備など、優先順位を付けて対策を講じていくことが求められます。
2職場環境の改善
- 身体機能の低下を補う設備・装置の導入
- 高年齢者の特性を考慮した作業管理
加齢に伴う視力や筋力、バランス能力、感覚機能などの低下を踏まえ、設備や作業環境の改善を行い、安全に働き続けられる職場を整備することが求められます。具体的には、照度の確保、段差解消、手すりの設置、防滑対策、暑熱対策、補助機器の導入などにより、転倒や墜落、熱中症といった災害リスクを低減します。
また、設備面だけでなく、作業スピードや作業姿勢、勤務時間の見直し、休憩の取り方の工夫など、高年齢者の特性に配慮した作業管理も必要です。
3高年齢者の健康や体力の状況の把握
- 健康状況の把握
- 体力の状況の把握
- 健康や体力の状況に関する情報の取り扱い
健康診断を確実に実施するだけでなく、結果の内容を丁寧に説明し、高年齢者自身が健康状態を正しく理解できるよう支援することが求められます。また、体力チェックなどを継続的に行い、本人と企業の双方が身体機能を客観的に把握し、業務内容の見直しにつなげます。
併せて、健康情報や体力に関する情報は、本人の同意取得や不利益取り扱いの防止などに配慮し、適切に管理します。
4高年齢者の健康や体力の状況に応じた対応
- 個々の高年齢者の健康や体力の状況を踏まえた措置
- 高年齢者の状況に応じた業務の提供
- 心身両面にわたる健康保持増進措置
把握した健康状態や体力に応じて、労働時間の短縮や深夜業の見直し、作業内容の変更などの就業上の措置を講じ、無理のない働き方につなげます。実施にあたっては、産業医の意見を踏まえつつ、本人と十分に話し合いながら進めることが重要です。
また、安全と健康の観点から業務の適切なマッチングを行い、必要に応じてワークシェアリング[1]など柔軟な働き方も検討します。併せて、運動・栄養・メンタルヘルス対策など、身体機能の維持向上に向けた健康保持増進を組織的に行うことが努力義務となります。
注
[1]: 複数の労働者で業務を分け合うこと。
労働者に求められる取り組み
同指針では、高年齢者の労働災害防止にあたり、労働者自身の関与も重要とされています。労働者は、自らの身体機能の低下などが労働災害リスクにつながる可能性を理解し、その前提で事業者と協力しながら安全対策に取り組むことが求められます。
つまり、事業者が一方的に対策を講じるのではなく、労働者自身も健康状態の把握や体調の申告などを通じて関与し、労使で連携して安全な職場づくりを進めることが重要とされています。
相談窓口
労働基準局安全衛生部安全課が問い合わせ窓口です。

