採用の成果を測定することがTAに欠かせない

鈴木 もう1つ、人事がコストセンターから脱却し、経営のパートナーとなるためのアクションについて伺わせてください。人事は経営陣とどう連携すべきでしょうか。
岩本 私は日本CHRO協会などの活動を通じて、人事はバックオフィスではなく「コーポレートエグゼクティブ」になるべきだと発信しています。事務作業はテクノロジーに任せ、人事はCHROとともに経営を人材の軸で引っ張る一員になるべきです。アメリカではCEO、CHRO、CFOの3人を「G3(グループオブ3)」と呼び、毎週のように経営の議論をしています。日本でも、G3が週に1度ぐらいの頻度で議論を行っている企業が出てきています。
採用についても、これまではルーティンワークとして現場に任せきりでしたが、これからは採用力が企業の命運を握ります。そうなると、採用は「コスト」だけでなく「ROI(投資対効果)」で見る必要があります。
鈴木 採用のROIを測るのは難易度が高いですが、どのような指標が考えられますか。
岩本 「クオリティオブハイヤー」や「インパクトオブハイヤー」といったメトリックを各社で定義し測定することですね。クオリティオブハイヤーの測定を入社半年後に必ず実施している日本企業もあります。また、あるポジションが欠員していることによる「オポチュニティロス(機会損失)」を金額換算するのも有効です。
鈴木 弊社の採用においても、「営業が1人欠員すると、LTV(Lifetime Value)換算でこれだけの損失が出る」といった計算をしています。そう定義すると、人事が「入社日を1日でも早める交渉」をすることに、明確な経営的価値が生まれますね。
岩本 外資系企業では、人事に事業視点を強く求める傾向があります。私が以前いたノキアでは、人事の採用が成果を上げない場合には「外部を使ってもかまわない」といわれていました。事業部門からすると、人事部には間接的にお金を支払っているわけで、採用についてもそれに見合ったリターンをもたらしているかを評価していました。
鈴木 その厳しさは、今の日本企業の人事に欠けているかもしれませんね。最後に、TA担当者に求められる心構えを教えてください。
岩本 「プロスポーツのスカウト」のようであれ、ということですね。どこに誰がいるかを常に意識し、自社の魅力を高めて引き寄せる。ブランディングやマーケティングの力を借りながら、自社のエンプロイヤーブランドを磨き続ける。そこからすべてが始まります。
鈴木 たいへん示唆に富んだお話をありがとうございました。

