給与領域で、20年以上使用した海外パッケージから国産システムへのリプレイスが盛んな理由
私が社会人になった2000年代前半は、ERPパッケージソフトの導入が盛んになり始めた時期で、国内大手企業がそれまでホストコンピューターを使っていた経理や給与の処理を、海外パッケージ製品に置き換える動きが活発になっていました。
私もそのような海外パッケージの導入プロジェクトに多く関わりましたが、ソフトウェアとしての素性はとても良いと感じました。パッケージはシステムの基本フレームを提供し、個別要件はアドオン開発により実装される構造となっていますが、これらのアドオンで用いられる言語は、メインフレームで使われてきたCOBOL[1]に近い特徴を持っていました。
注
[1]: 主に会計処理や事務処理のために開発されたプログラミング言語。
そのため、既存のレガシー機能をリバースエンジニアリング[2]により仕様書にしやすく、結果としてアドオン機能の設計・実装において高い親和性があったことも一因と考えられます。またアドオンプログラムを書きさえすれば、たいていのことは実現できました。
注
[2]: 既存のシステムを解析し、その仕様や構造を導き出す手法。
加えて、海外パッケージ製品の中には標準機能をカスタマイズ可能なものもあり、それはすなわちパッケージ標準機能のソースコードが開示されていることを意味しました。私が2006年ころ携わった海外パッケージ導入プロジェクトにおいて、源泉徴収票をPDF形式で出力する機能を作成したときも、その手段は標準のカスタマイズでした。
たとえば、パッケージのデータベース上に作成したアドオンテーブルへデータを吐き出させ、それをINPUTにしてPDF生成エンジンを起動して帳票作成する方式を採用しました。こうすることで、源泉徴収票という複雑な計算に基づき導出される各項目の値そのものはパッケージの標準機能により担保され、帳票の出力順やPDFファイルを支店や営業所単位で分割したいというようなクライアントの細やかな個社要望はアドオン部分で吸収することができ、双方のメリットを生かした合理的な対応として当時クライアントからの評価も高かったことを記憶しています。
ただしこのような“つくり込み”により構築されたシステムは、そのシステム保守をユーザー企業にて内製化して運用することが極めて難しく、専門のプログラムスキルを有した導入ベンダーの支援から抜け出すことができなくなり、運用コストがかさむ原因となりました。また、所得税法改正など日本固有の法制度の変更は、ワングローバルシステムを提供する海外パッケージベンダーにしてみれば1つのリージョンで発生したローカル対応となり、必ずしも最優先で対応できるとは限らず、この点も日本のユーザー企業からみると法改正にタイムリーに対応されないというデメリットとなっていきました。
これらのデメリットに対する1つの明確な解が国産パッケージへのスイッチです。標準機能のパラメータ設定を中心としてユーザー要望をシステム実装につなげる思想のソフトウェアが多く、アドオンプログラムによるつくり込みと比べると実現できる内容に制限はあるものの、いわゆるノーコード・ローコードで構築された仕組みは、導入企業がその運用を内製化された体制で進めるには都合がよいのです。
加えて、国産ゆえに日本ローカルの法制度改正への対応も優先度が高くタイムリーであることも海外製品に比べると分があります。これらの要素から、特に最近は私の周囲においても20年以上使用してきた海外パッケージの給与計算システムを国産のそれにリプレイスしているという話を多く耳にします。
引き続き海外パッケージが主流の製品とは
一方で、ジョブ型人材管理を厳密に取り入れたタレマネ製品は、引き続き海外パッケージが主流と考えます。そもそもジョブ型は海外発の思想ですから、海外パッケージが主流なのは当然のことではあります。
海外パッケージベンダーにしてみれば、前述の給与計算のように日本ローカルの法改正などを常にキャッチアップし続けるよりも、思想そのものを輸入して日本のユーザー企業に取り入れて使ってもらうほうがはるかに合理的なので、このジョブ型管理やグローバルタレマネ領域に注力するのは自然の流れだろうと考えています。
システムの設計としても、「従業員(人)の前にまずジョブ(職務)やポジションがあり、会社を構成するために必要なジョブやポジションが定義された後で、それらの“箱”の中に従業員をパズルのように当てはめていく」という設計思想を完全に取り入れている国産ソフトウェアはまだ存在しないのではと思います。
もちろん昨今は国産のタレマネ製品も多く存在しており、私自身もその導入にも携わっています。ただ、日本企業は海外進出している大手であってもメンバーシップ型からジョブ型への移行段階ですから、国産システムもジョブ型を厳密に取り入れてはいないことが理由だろうと予想しています。もし仮に私が国産の人事パッケージシステムの開発責任者だったとしても、ジョブ型の設計思想で製品開発を進めるのは、投資対効果の観点からも時期尚早だと判断してしまうかもしれません。
このような観点から、この業務領域のシステム化を推し進める際には海外パッケージを選定することが前提となると考えています。

