クラウド時代に最も重要なスキルはセキュリティ
――クラウド時代のプログラマは、プログラミングだけでなくインフラに関する知識も必要でしょうか。
ティボドー氏:プログラマはインフラについてある程度知識を持つべきですし、インフラエンジニアはプログラミングについて知識を持つべきです。さらに双方にとってセキュリティが重要になります。プログラマはクラウドから情報を取得し、モバイルデバイスに提供します。その中でセキュリティをいかに担保するか。暗号をどう使うかなど、セキュリティの観点からお互いのことをよく知っておく必要があります。
――セキュリティが重要ということですが、日本企業のセキュリティに対する意識についてどう思いますか。
マグリンチィ氏:日本では大きなハッキング事件が続いています。脅威にさらされているためか、急激にセキュリティへの意識が高くなっていると感じます。
ティボドー氏:意識が高くなっているものの、認識は十分ではないと思います。セキュリティ対策にかける費用や人材は実際には増えていません。「ハッキングされませんように」と願っているような状況でしょう。 ハッカーは個々の企業ではなく、情報が集まっている巨大データベースを狙います。ロシアや北朝鮮からいとも簡単に大量の怪しい電子メールを送りつけ、そのうち1つでも当たれば大儲けになるのです。
マグリンチィ氏:大企業じゃないから狙われないと思うかもしれませんが、中小企業でも大企業へのハッキングの入口に使われてしまうことがあります。セキュリティ上の脅威は規模の大小に関係なく平等です。南アフリカのようにブロードバンドネットワークが普及していない国ではセキュリティの脅威は低くなりますが、日本は高度にネットワークが発達している分、その脅威が増します。
プログラマにお勧めのCompTIA認定資格は
――プログラマにとって重要な資格を挙げるとしたら何になるでしょうか。
マグリンチィ氏:やはり、セキュリティに関する認定資格です。CompTIAでは、セキュアなネットワークの維持とリスク管理について知識やスキルを評価する「CompTIA Security+」と、セキュリティ担当者を対象にセキュリティの知識とスキルを評価する「CompTIA Advanced Security Practitioner(CASP)」の2つを提供しています。
また、プログラマには、コミュニケーションやプロジェクト管理といったソフトスキルも大切です。CompTIA日本支局では、そういったソフトスキルを評価するための「ビジネス・コミュニケーション・スキル診断(BCSA)」を提供しています。
――現在、CompTIAにはプログラミングスキルを評価する認定資格はありませんが、新設する予定はありますか。
ティボドー氏:RubyやPythonなどの認定資格を作ってほしいという要望はありますが、そのような認定資格の必要性は低いと考えています。たとえば、写真を見ればそのカメラマンのスキルがすぐにわかるように、作成したプログラムを見ればプログラミングスキルは容易に判定できます。そのため、プログラミングの認定資格が就職に有利に働くようなことはあまりないでしょう。
一方、技術力の裏付けとなる知識があるかどうかはすぐには判断できません。だからこそ、技術力を証明するグローバルな認定資格が重要になると考えています。
――CompTIAの今後の展望は?
ティボドー氏:CompTIAは、各技術分野に携わる組織や人物に開発プロセスに参画してもらい、最上の状況で認定資格を提供できるようにしています。また、認定資格がその技術より先に進みすぎないように注意しています。たとえば、クラウド関連の知識やスキルを評価する「CompTIA Cloud+」は2013年に提供を開始し、現在人気の認定資格になっています。今後はロボティクス、3Dプリンタ、自動運転、医療といった分野の認定資格が考えられるかもしれませんね。
取材を終えて
「自分でいろいろと考えて創造性を発揮できる」ことは、海外市場のみならず競争が激化する国内市場においても、優秀なプログラマの条件と言えます。そして、技術力に加え、クラウドやセキュリティ、デザインなどの知識を身につけ、ソフトスキルを磨くことも大切です。